「とにかく大泉さんを研究しました。『~でしょ』みたいな独特の語尾、イジる、イジられるの応酬、あとは、実際の彼のレパートリーからお借りしたモノマネ。さらに内面で言えば、柔和さの裏に仕事へのシビアな一面を持ち、二枚目も三枚目も演じられる、その振り幅の大きさが大泉さんの唯一無二の華になっている。そのすべてを速水に当てはめていきました」
斬新な試みに挑みながらも、単なる色物の作品ではない。廃刊にリストラ、他業種の参入まで、出版界の現実問題が盛り込まれる。
「あくまで大人が読める社会派小説に仕上げたかったんです。雑誌は書籍同様、販売が激しく落ち込む一方、デジタル化の波で急速に構造が変わっているメディア。出版界の縮図であり、どの業界も過渡期にある今の世の中を最も体現しているものだと思います。各所への取材をかなり掘り下げ、業界の問題点を浮き彫りにしているので、出版社の方々からは『リアルすぎて痛い』と言われますね(笑)」