くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】潔癖症の自分が不安になります。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回は子供の頃から潔癖症に悩む女性からの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>
山田さんの『ヒキコモリ漂流記』を読み、手を洗うのが止められないなど、自分に近い不安をお持ちの方だと思いまして、ご相談します。

子供のころから、友達の家に遊びに行くのも、自分の家に遊びに来られるのも苦手でした。
人の家に行くと散らかってたり掃除されていない箇所が気になり、トイレの便器に汚れを見つけようものならその後震えて遊びにも集中できなくなり、自分の家に友達が来るとその足裏の汚れや彼らのまとう‟空気”で家が汚れてしまうようで落ち着かない……という具合でした。

大人になった今でも極力、人の家は訪ねないし、自分の部屋に自分と家族以外の他人が入るのも耐えられません。むしろ潔癖症が年齢と共にどんどん進行している気もします。ハンディモップ片手に家じゅうをウロウロしている三十路の私、大丈夫でしょうか。
(KEIKO/女性/30代OL)

山田ルイ53世さんの回答

僕も"引きこもり"だった時期、KEIKOさんに負けず劣らず潔癖症で、コロコロが手放せない生活を送っておりました。
更に、何か行動を起こす際、やっておかなければ気が済まない……そんな儀式、"ルーティン"をいくつも抱えていました。
勉強する前には、部屋の掃除だけでなく、鉛筆や定規などの文房具、目覚まし時計、壁に掛かった絵等々、とにかくありとあらゆるものを乾いた布で磨き上げなければならない、とか。
人気のない深夜の時間帯、たまにジョギングをしたりするのですが、飛行機雲や船の航跡のように、自分の足跡がアスファルトの道路にくっきりと残っている気がして仕方がない。
足跡がまっすぐでないと我慢ならないので、ランニングフォームが限りなく競歩っぽくなる、とか。
今思えば、強迫神経症の類だったのでしょう。

ある時から、ルーティンの全てを、「こぶしに"フッ!"と息を吹きかける」という一つの行為に集約することに成功しました。
なので、今は自分の手のひらに全てを封じ込んでいるような状態。
いつ爆発するか分かりません。
僕の右手は、まさに"パンドラの箱"です。

以前対談した、精神科医の斎藤環氏によれば、自力である種の"置換療法"を編み出し、克服した……僕のようなケースは非常にレアで、結局は、専門家に相談したほうが良いそうです。
念のため。
ちなみに、今でも神経質というか、整理整頓された環境で生きていたい、綺麗好きだという面はしぶとく残っています。
僕とは対照的に、妻はいい意味で気にしないタイプ。
ズボラです。
食器を洗う際も、「皿溶けるで⁉️」というくらいつけ置きします。
最初のうちは嫌だなぁ、と思っていましたが、今は「自分の机の周りだけ片付いていればよし!」と妥協できるようになった。
妻が"ゆるい人間"で良かったのかもしれません。

僕は「とりあえず」という言葉をすごく大事にしています。
KEIKOさんはおそらく真面目な人。
一つ一つの自分の中の決め事、囚われている行為をし終えないと、その先が出来ない。
やっても意味がない……そんな感じでしょうか。
色々あるけど、不完全だけども、それはさておき「とりあえず」動いてみようと心掛けるのは良いかもしれません。

山田ルイ53世●お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当。本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、近著に『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)。
⇒ 公式ブログ

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