暑さに負けず疲れにくい体を作る、1日の過ごし方。
撮影・黒川ひろみ イラストレーション・小林マキ 文・黒澤 彩
「疲労というと体の問題だと思われがちなのですが、実は、疲れを感じているのは脳。通勤もしていないのに“在宅疲れ”に悩む人が増えたのもそのためです。生活のリズムを整え、自律神経をコントロールすることが大切です」
こう話すのは疲労回復を専門とする、リカバリーアドバイザーの福田英宏さん。元気なときは交感神経と副交感神経が1:1で入れ替わるイメージだが、どことなく体調が悪いと感じているとしたら、交感神経の優位な状態が長く続いている可能性が。疲れを溜めないためには、睡眠の質を意識した一日の過ごし方がポイントになる。
「同じ時間を寝ても、寝ている間にちゃんと副交感神経が優位になって深く眠れている人と、交感神経が優位なまま眠りが浅い人とでは、疲労の回復度合いはまるで違ってきます」
深く眠るためには、余った時間を睡眠に充てるのではなく、就寝時間を決めて、そこから逆算して一日のスケジュールを決めていくほうがいい。朝、昼、夜、時間帯別の過ごし方のポイントを見ていこう。
(朝)目覚めてからの行動が、睡眠の質を高める鍵に。
紫外線が気になる夏も、朝だけは5分以上、光を浴びよう。太陽光によりセロトニンというホルモンが分泌されて交感神経が優位に切り替わり、活動スイッチが入る。
「外に出るのがベストですが、窓辺でもよしとしましょう。セロトニン分泌には2500ルクス以上が必要とされ、晴天なら10万ルクス、曇天でも5000ルクスの光量があります。室内の照明はせいぜい1000ルクス。太陽光がどれほど効果的かわかります」
もうひとつ大事なのが、朝食。セロトニン濃度を上げるトリプトファン、ビタミンB₁を多く含む食品(左図参照)を積極的に取り入れたい。午前中、眠気に襲われるのは睡眠の質がよくない証拠なので、一度生活を見直す必要あり。
〈 朝食におすすめ 〉
●トリプトファンが含まれる食品
・ヨーグルト
・牛乳
・アボカド
・チーズ
・ピーナッツ
・アーモンド
・ごま など
●ビタミンB1が含まれる食品
・玄米
・青魚
・にんにく
・しょうが
・豚肉 など
●両方が含まれる食品
・バナナ
・納豆
・豆腐
・豆乳 など
(昼)取り入れたほうがよりよいこと、注意することを確認。
一見、疲労回復とは関係がなさそうな昼の時間帯にも、気をつけるべきことがあると福田さん。
「起床して8時間後くらいに、一度眠気が訪れます。これは寝不足ではなく自然なこと。そのタイミングで30分ほど昼寝ができると、夕方までの活動効率がよくなります。ただし、1時間以上眠ると夜の入眠に影響してしまうので、目覚まし時計などを利用して、時間はくれぐれも30分以内に」
昼間のうちに体を動かすことも意識したい。デスクワークの人は20分程度のウォーキングやリズム運動など、軽い有酸素運動をする時間を設けるといい。
もう一つの注意点はカフェイン。夕方以降に飲むと覚醒作用が夜まで続いてしまうので、コーヒーなら1日3杯までを目安とし、15時以降は飲まないようにする。
(夜)ベッドに入るまで準備をしながら、ゆったり過ごす。
仕事を終えたら就寝に向かって準備をする時間。消化中は臓器が休まらないので、食事は寝る3時間前までに済ませよう。また、体温が下がってくるときに入眠しやすくなることから、入浴は寝る直前ではなく1時間半前を目安に。
「夜は部屋の照明を少し落とすようにします。せっかく入浴などで副交感神経を優位にしても、明るすぎる部屋にいるとスムーズに眠りに入りづらくなるからです」
同じように、眠る前のスマホも明るさによる弊害が大きい。
「スマホを見ながら寝落ちなんてもってのほかです。それは入眠ではなく〝気絶〟するのと同じこと。交感神経が優位なままになり、疲れは取れません。ベッドの中ではスマホを手放して、リラックスできる音楽を聴くなど自分なりの入眠習慣を見つけましょう」
『クロワッサン』1073号より