「私なんかが生きてきたのとは時代が違いますからね。そうですか、『クロワッサン』の読者アンケートの結果“最も捨てたいのは、夫!”と。それで、本当に捨てて大丈夫? って、ずいぶん贅沢な悩みですね。大丈夫も何も捨てざるを得なければ貧乏しようと不自由しようと捨てるしかないし、どこか捨てるに忍びない愛情がいくらか残っているならですよ、『大丈夫?』なんて聞き方にならないですよね」
言われてみればそのとおりなのである。小説でもエッセイでも平易な言い回しで核心をつく佐藤愛子さんは、息をするようにユーモアあふれる鋭い指摘をしてくださる。サービス精神の塊!
「私を怒らせようとして、こんな質問を作ったんじゃないでしょうね」
ーーいえいえ! 怒らせにきたわけでは決してありません。
「まあいいですよ。昔『クロワッサン』から時々うちに取材にきてた女の人がいて、何年前かしらね。最初にきたとき私に言うのよ。『出がけに編集長から“佐藤愛子はうるさいから気をつけろ”って言われました』って(笑)。それはそうだろうけどね、何もわざわざ言う必要はないじゃない。面白いわね」