くらし

【紫原明子のお悩み相談】シングルマザーですが、創業期のベンチャーに転職するか悩んでいます。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。今回はシングルマザーとして子育て中の女性からのキャリア相談です。

<お悩み>
柴原さん、はじめまして。 5歳の娘をもつシングルマザーです。
これからの仕事の選択について、迷っていて、今回相談させてもらいたいと思いました。
いまは、どちらかというと安定した会社で、給与面も含めてシングルマザーでも不安なくやっていける会社で仕事自体もなんとか楽しくやっています。
シングルマザーだし、まずはしっかり子育てと仕事をできる環境を重視しなきゃと続けてきた今の仕事ですが、根本的には合っていない仕事と思っており、いつかもっと熱中できるところで働きたいと思っていました。
今、子育てに手がかかる時期をだいぶ抜けてきたと感じ始め、転職活動をはじめ、いくつか気になっていた会社からオファーをもらいました。転職する場合、給与面、拘束時間、勤務地などすべての条件において悪くなり、ただ自分にとって、ワクワクする場所かという直感を信じて飛び込むことになります。
迷っている点は2つあって、1つ目は手はかからなくなったとはいえ、気持ち面のサポートなど、より見えにくい心の面で気をつけてあげたいことが増えてきたと感じており、勤務時間が長くなることでこどもに負担をかけないか(実家なども遠くサポート体制が多くない)。2つ目は、どんな選択もそうだとはおもうのですが、ここならやれるという確信が持てないまま、このタイミングで創業期のベンチャーへ飛びこむというあまり合理的ではない選択をシングルマザーの私がしていいのか……という点です。
いつも心に優しく響く柴原さんの子育てや仕事の経験から、もし何か選択するときに考えた方がいい軸があれば、ぜひ聞かせてください。よろしくおねがいします (相談者:YM/女性。5歳娘の母/ 30代会社員/ シングルマザー)

紫原明子さんの回答

YMさん、こんにちは。毎日お疲れ様です。転職、いいですね!
毎日の仕事にやりがいをもって取り組めるかどうかって、決して無視できないことですよね。生活のためにと自分の感情や好奇心に蓋をし続けていると、そのうち、自分に感情や好奇心があったことそのものを忘れてしまいかねません。娘さんは将来、必ず自立して自分の人生を歩きはじめるし、我々はおそらく今後40年、50年と、長きにわたり働き続けなければなりません。そんな中で、30代のうちから感情や好奇心をすっかり手放してしまっていたら、きっと遅かれ早かれ、私は何のために生きているんだろうと無気力にとらわれ、動けなくなってしまうと思うんです。

生活はたしかに大変なんですが、子どもに心配をかけない老後のためにも、なんとかギリギリのところで折り合いをつけながら、自分の感情や好奇心を守り抜いていくべきだと私は思います。ですからYMさんの選択、私は本当に素晴らしいと思います。

で、このような前提の上で、現実的なことについても考えていきましょう。
まず一つめの懸念点、勤務時間が長くなることでこどもに負担をかけないかということですが、親の環境が変わると、どうしたって子どもにも一時的な負担はかかってくるのだろうと思います。しばらくは親子ともにしんどいかもしれませんが、新しい仕事に就くと3日に1回しか家に帰って来られなくなる、というような大変化でもない限り、ここはなんとか頑張って、親子で慣れていくしかないのかもしれません。

娘さんは現在、保育園に楽しく通えているでしょうか? 信頼できる先生はいますか? また来年には小学生かと思いますが、学区の学童保育は安心して利用できそうでしょうか。私の友人の子どもは、小学校入学とともに学童に通うことになったのですが、そこがどうしても肌に合わず、利用を毎日泣いて嫌がったそうです。結局は親の方が根負けし、働き方を変えざるを得なかったと話していました。「小1の壁」とよく言いますが、もしかすると今より、来年のほうが本格的な試練のときかもしれません。その際にも、娘さんになるべく負担のないように、たとえば今からファミリーサポートを利用するなどして親子ともに安心できる預かり先を作っておくとか、あるいは小学校近辺に、娘さんが一人で行けそうな習い事や託児があるかを調べておくなど、頼れる人、頼れる場所を複数確保しておく、ということが必要だと思います。

そして二点目、確信のないまま創業期のベンチャーへ飛び込むという転職をしていいのかどうかということですが、僭越ながら、かつてベンチャー起業家と結婚していた者として。また、シングルマザーとなって最初に就職した先が一種のベンチャー企業だった者として。ベンチャーはシングルマザーの仕事先に、とても良いと思っているんです。

もちろん一言でベンチャーといっても色々あるので一概には言えませんが、少なくとも私の知っている界隈のベンチャーは、ベンチャーだからこそリモートワーク、副業OKというように柔軟な働き方ができたり、旧態依然の会社に残る“ハンコに次ぐハンコ”みたいな無駄な意思決定プロセスが省かれていたり、とにかく働きやすさを重視している会社が多いです。

また、創業期ということなので、おそらく入社後はお一人で何役もこなされることになるのだろうと思いますが、ここでしっかり揉まれると、後々やれる仕事の幅がぐんと広がります。そこへ来てベンチャーは、往々にしてセミナーやらランチやら、他のベンチャー企業との交流も盛んなので、そこでネットワークをきちんと築いておけば、万が一この会社は違ったなと思っても、転職の機会が確実にあります。……ただし、機会を活かせるかどうかは、社外に向けていかに日頃から存在感を発揮できていたかというところに大きくかかってくるので、転職後はぜひ、会社のためではなく自分のキャリアのためにこそ働く、そのために、会社を利用する、とそのくらいの心持ちでお仕事に挑まれると良いのではないかと思います。

「大変だったけれど、あのとき決断は決して間違っていなかった」
そんな風に思える10年後を、YMさんが迎えられますように。陰ながらご活躍をお祈りしています。

紫原明子さんへのお悩み相談はこちらから!

イラスト:わかる

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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