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【紫原明子のお悩み相談】モテるための「隙」ってなんですか?

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。あなたもお悩みを投稿してみませんか?

<お悩み>
「隙」ってなんでしょうか?
恋愛を意識しはじめた10代の頃から、男女問わず「あなたには隙がない(壁がある)」と言われ続けて早15年以上が経ちました。

笑顔は絶やしていないつもりですし、どんな話を振られてもそれなりに会話をすることができます。なのでお友だちやお仕事仲間はそれなりにいるのですが、どうもこと恋愛はうまくいきません。今は仕事が楽しく、結婚は全く考えていません。でも彼氏は欲しいな~と思っていますが、必ず「隙」問題がまとわりつき、恋愛関係のスタート地点にも立てない日々が続いています。(合コンなどの類などを行った後、「あの子しっかりしすぎ~」と言われていたということがしばしばあります。)

なぜ自分が「隙」がないと言われるのかを自己分析もしてみました。
・自営業であること
・ハキハキ喋りすぎること
・ソース顔で目が大きすぎること(顔からプレッシャーを与えているのでは)
・若干モード寄りな服を好んでいること
・お酒が強いので、ほとんど崩れない
……など、挙げればキリがないのですが、すぐに顔は変えられないので、やっぱり俗に言うモテ服? などで見た目を変えたり、のんびりした喋りかたに変えないと「隙」は生まれないのでしょうか? そしてやっぱり恋愛のスタート地点に立つためには「隙」って大事なんでしょうか?
(相談者:そめちゃんさん/自営業 31歳独身)

紫原明子さんの回答

そめちゃんさんこんにちは。
私はかねてよりずっと気になっていたことがあります。「隙を見せろ」って、そもそも悪いやつの言い分ですよね。たとえば、スリが望むような隙といえば、ぱかっと口の開いたバッグだし、コソドロが望む隙といえばうっかり鍵を締める忘れた玄関です。やましいことのないお客さんなら隙なんて見せなくても堂々と玄関のインターホンを押して「ごめんください」と入って来れば良いわけですから、隙というのはつまり“誰かの大切なものや場所、守りたいものや場所に通じる、非正規の入口”です。

で、そめちゃんさんがおっしゃっているように、すぐに酔っ払うとか、ゆっくりしゃべるとか。これらはたしかに隙を演出する、代表的なテクニックとされていますが、ではこういったやり方で演出される隙が、一体どこに通じる入口なのか、ということをあらためて考えてみると、それはどうも“判断力の低さ”なのではないかと思います。普通、自分の判断力の低さというのは致命的な弱点なので、人前ではできるだけ隠しておきたいものですが、そこをあえて演出して、ちらつかせる。つまり付け入られやすくするということによって、この人はごまかすことができそう、性行為が受け入れられやすそう、もっといえば、支配できそう、というような悪い気持ちを喚起させる効果があるものと思われます。

だから異性が言う「隙がない」って話半分で聞いておけばいいんじゃないかと思いますが、そめちゃんさんがどうモテたいかにもよります。つまり、「セックスしたい」と欲情されることをもってモテとするのか、あるいは「セックスだけでない関係性を育みたい」と望まれなければモテとしないのか、ということです。

こんな風にかしこまって並べると、そりゃ後者こそ正しいとつい言いたくなるかもしれませんが、「セックスしたい」と誰かに望まれること、つまり前者的なモテによって、じわっと自尊心が満たされること、少なくとも私にはあります。もちろん必ず毎回そうとは限りませんが、割とあります。若いときに全然モテなかったせいですかね、あるんです。そういうもんではないでしょうか。
だからぜひひとつ、正しい・正しくないを抜きに考えてみてください。そしてセックスしたいと思われるだけのモテでもいい! という結論が出たら、ゆっくりしゃべる、酒に酔ってなくても酔ったふりをするといった、すでにご自分で導き出されている隙の作り方を実行されると良いのではないかと思います。それで不十分であれば、さらに判断力の低さを印象づける施策を重ねていきましょう。自分では大胆に演出しているつもりでも、いかんせん相手の方がより輪をかけて判断力が低い場合もありますし、いっそのこと、飲んでいる途中でトイレに行って、うっかりスカートを下げ忘れて出てくるくらいのことをしてもいいかもしれません……いや、よくないかもしれません。私はやったことないですが、女友達がジーンズを上げ忘れて登場した状況には遭遇したことがあり、やはり判断力が死んでいるなと感じました。

まあそんな冗談はさておき、です。そめちゃんさんが望まれるものがもしも後者のモテ、つまり「この人とセックスだけでない関係性を育みたい」と望まれるモテ方であれば、ちょっとやり方を変える必要があるかもしれません。というのも、「判断力が低い」という隙間から入り込んでくる相手というのは、先にも述べたような目論見をもって近づいてくるわけで、短期的に自尊心を満たしてくれたとしても、長期的に関係性を育むにはいろいろ大変です。

そうじゃないよ、と言われるかもしれません。付け入りたいのでなく、守りたいだけなんですよ、と主張する人もいるかもしれないけど、いずれにせよそういうのは望んでいませんよね。いざというときの心の拠り所になってくれる分には嬉しいけれど、デフォルトで一歩前に立っていて欲しいかというと、そうじゃないじゃないですか。それが当たり前になったらやっぱり、バカにするなよ、と言いたくなるじゃないですか。ここは私が、ここはあなたが、というように、状況に応じて前衛と後衛を入れ替わりながら、ともに戦い続けられる相手の方が、よくないですか?

なので、そういう相手にどうやってリーチするかということを考えてみます。

そもそもそめちゃんさんは笑顔を絶やさず、どんな話題をふられても会話ができて、ご自分で会社をやられていて、ハキハキお話される方とのことです。それはきっと、そめちゃんさんがこれまでにたくさん努力を重ねて、自分を厳しく律する中で身につけてこられた、自立して生きていくための武器なのでしょう。しっかりし過ぎと言われるほど頼もしいそめちゃんさんのおかげで、安心する人、助けられる人、まわりにたくさんいることと思います。

けれども、社会の多くの人を不快にさせない器用な振る舞いって、逆に言えば誰かに引っかかるためのフックがどこにもない、平坦な状態とも言えます。その他大勢の人とは違う、ともに戦えるような特別なパートナーシップを組む相手をひっかけるには、そめちゃんさんが努力して身につけた社会性という武器を一部外して、デコボコした形になる。自分の得意なことも、苦手なことも、同じようにさらけ出す必要があると思うんです。

当然、これには結構勇気がいります。何しろ私達が社会に最適化するのは、必ずしも他人のためだけでなく、簡単に踏み荒らされたくない自分の尊厳を守るためでもあります。無自覚な言葉で傷つけられたくないから、自分を守るために必要に迫られて社会性を身につけるんです。だから、武器を外して誰かと向き合うというのは、傷つく覚悟を決めるってことでもあります。何十にも施錠してきた心の扉の鍵を開けて、弱くて、恥ずかしくて、子供じみていて、一番人に見せたくない自分に通じる隙を作る。そこに、他人を迎え入れる勇気を持つってことだと思うんです。

観念的な話ばかりでは実用性がないので、具体的にどうするかということも考えました。これはひとつの提案ですが、いつも笑顔でいるというのをやめてみるのはどうでしょう。だからってムスッとしろと言うわけではありません。ただ、不安や緊張、あるいは面白くないとか、そうは思わないとか、誰かといるときにふと頭によぎったネガティブな感情を、今までより丁寧に拾い上げてみるんです。そうすることで、まずはそめちゃんさんご自身が不完全な本来の自分を見つけ出す。そして、そんな自分を今よりもう少し許容できるようになると、いずれはもっと気楽に、他人にも見せられるようになるかもしれません。もちろん、全員にそうしなくたっていいんです。この人とより深くわかり合いたい、そう思った人だけにやればいいと思うんです。

そめちゃんさんはなんでも、同性のお友達からも、しっかりし過ぎと言われるとのこと。もしかしたらご友人たちは、もう薄々気付いているのかもしれませんよ。しっかり者という鎧の内側に、もうひとり別のそめちゃんさんが潜んでいること。その上で、不完全でデコボコでも、受け入れる体制はできているんだよ、と暗に伝えたいのかも……もしかしたら、ですが、私はそんな風に思いました。

イラスト:クロワッサン編集部・どーなつ

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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