誰かと思ったらおさぼり大臣さんじゃないですか! お久しぶりです。
お元気そう、というよりもはや絶好調そうで何よりです。パンチライン連続のお手紙に圧倒されました。今年の漢字は「穴」、初オルガズムで新時代の幕開け、平成も終わるしね!ってここまで来るともはや“アブダビ”も卑猥な言葉に見えてくるほどセックスで頭がいっぱいになっている感じ、わかる。わかりますよおさぼり大臣さん。私も同じ思いをしましたよ。子供二人産んでシングルになって、色っぽい話とは一切無縁で生きていくしかないのだろうと一度は覚悟を決めましたもの。そんな矢先に思いがけず降って湧いたいくつかのありがたいお誘い。のったにせよ、のらなかったにせよ、そのときにかけられた言葉は私の心の中のアルバムに永久保存してあります。モルジブの海も、屋久島の森も、今後一生忘れることはないと思った絶景をすっかり忘れてしまっても、離婚後に頂戴した全口説き文句だけは絶対に忘れない、なぜならしょっちゅう思い出して自尊心を満たすから。文庫なら読み返しすぎてとっくにボロボロです。
前回のお手紙で離婚の準備もバッチリと仰っていたおさぼり大臣さんなので今回も当然ぬかりないとは思いつつ、やはり一応言い添えておかねばならないのは、すでに別居中と言えども、離婚前の不貞行為は後々厄介なことになりかねないということです。今ならまだ堂々ともらえるはずの、夫の不貞行為に対する慰謝料も、おさぼり大臣さんが家庭の外でセックスをして、そしてそれを万が一にも夫側に知られてしまうことによって、もらえなくなることだってあります。いかなるときにも先立つものは大切です。セックスをするかどうかについてはぜひ、メリットとデメリットを天秤にかけ、慎重に検討されてください。
で、その上であらゆるリスクを引き受けてもセックスをする、ということになったとき、彼とボーイフレンドもしくはセフレとしてうまく付き合っていくための“呪文”ということ。これはもう後にも先にもひとつしかありません。
「あっちの穴は許しても、心の穴は私のもの」
これです。
基本的に、割り切った関係の相手に満たしてもらうのは性欲と、性的に欲望されることによる自尊感情だけです。最初のうちはそれで十分と思うんですが、何しろ私たちは欲深いので、ついだんだんそれ以上を求めたくなってしまいます。特にセックスの相性が良ければなおのこと、言わずともいろんなことを分かってくれそうな気になってしまい、人生における孤独や不安、夫婦関係がうまくいかなくなった際のトラウマといった、いつの間にか心にぽっかりと開いていた穴までこの際、相手が全部埋めてくれそうな錯覚を抱いてしまいます。
もちろん、奇跡的にそれを叶えてくれるスペシャルな相手に出会えることだってあるでしょう。けれども実際は、そうでない場合の方が圧倒的に多いです。そもそも、下の方の穴埋めだけを専門的に担当してくれるからセフレなのであって、心に開いている方の穴にまで寄り添ってくれるようになったら、それは最早人生のパートナーです。私たちは、水道屋さんに建て替え工事まで頼んだりしませんよね。水道は水道屋、餅は餅屋、セックスはセフレ。適材適所にオーダーを入れなければ、せっかく欲求が発散できるようになったというのに、無駄にフラストレーションが溜まってしまいます。私たちの孤独も、不安も、いつか作った心の傷も、本来私自身のものとして、大事にしなければなりません。簡単には触れさせない、たとえ下からの介入を許したとしても……と、これくらいの気持ちでいるといいんじゃないかなと私は思います。
そして最後に唐突に出てきた下着の色問題。もし、白を着ている自分にグッとくるとか、そういうことであれば迷わず白を選ばれると良いと思いますが、もしそういった嗜好がなければ、個人的に白はあまり推せないところです。なぜなら汚れが目立ちやすいので、ちょっと値の張るものを勝負下着のつもりで買っても、すぐに勝負できない下着に二軍落ちしてしまうからです。
おさぼり大臣さん。勝負のタイミングは決して今回きりではありませんよ。これからきっと何度も、何度も、勝負のときが訪れるんですよ。私たちの心の中にある口説き文句の文庫本は、これからますます内容が充実していくのです。ですからぜひ、長く、繰り返し勝負下着足り得るものをお勧めします。ご検討ください。
おさぼり大臣さんの新時代が、どうか素晴らしいものとなりますように。
アブダビ。
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