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浅丘ルリ子が大暴れする 傑作犯罪アクション映画!│『危いことなら銭になる』│山内マリコ「銀幕女優レトロスペクティブ」

『危いことなら銭になる』。1962年公開の日活作品。DVDあり(販売元・Happinet)

1955年(昭和30年)公開の『緑はるかに』は、日活初のカラー作品。ミュージカルあり、ちょっと子供騙しな冒険活劇ありと、エンタメ要素がてんこ盛り。本作の衣装考証を担当した中原淳一が描くイラストから抜け出したような大きな瞳の少女が、約2000人の中から選ばれ、役名のルリ子をそのまま芸名にして華々しく映画デビューを飾ります。

以降、浅丘ルリ子はそのゴージャスな美貌で、石原裕次郎や小林旭といった日活アクションスターの相手役をつとめてきました。ヒット作『夜霧よ今夜も有難う』などのムードアクションは、今観るとちょっと笑ってしまう世界観……。そんな中、1964年(昭和39年)の『若草物語』はめずらしく日活の看板女優が顔を揃えた良作。長女芦川いづみ、次女浅丘ルリ子、三女吉永小百合、四女和泉雅子と、それぞれが持ち味を活かした役を演じています。

結婚適齢期を迎えた浅丘ルリ子は、ヘアメイクもファッションも洗練されて本当に素敵! 男性スターに華を添えるのとは違った、女が憧れる女といった雰囲気が新鮮です。

そして意外な顔を見せているのが、1962年(昭和37年)公開の、中平康監督による異色作『危いことなら銭になる』。さながら『ルパン三世』のノリで軽快に描かれる犯罪モノで、エースのジョーならぬガラスのジョー(宍戸錠)を中心に、計算尺(長門裕之)など男性陣にまじって、紅一点とも子を演じています。てっきり添えモノ美女枠かと思いきや、将来の夢はパリで柔道教師になることという、斜め上を行くキャラ設定。主役の宍戸錠を得意の柔道でぶん投げつつ、パンツを見せるサービスショットもあるなど、非常に峰不二子的。しかし、お色気で悩殺よ〜みたいなことは一切せず、どこまでも対等に男子チームにまじっている姿が最高です!

映画の斜陽化とともにリタイア状態になる女優が多い中、昨年はドラマ『やすらぎの郷』で健在ぶりを見せた浅丘ルリ子。また映画でもゴージャスオーラを振りまいてほしい!

山内マリコ(やまうち・まりこ)●作家。映画化した『ここは退屈迎えに来て』が10月19日公開。新刊『選んだ孤独はよい孤独』。

『クロワッサン』983号より

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