それを演じるのが、現在に至るまで聖女のような存在でありつづけている吉永小百合というのがおもしろい。そして彼女の、誰にも本当の心は見せない、ミステリアスかつ思わせぶりな演技が本当に素晴らしいのです。京都の桜じゃないとお花見をした気がしないとか、新しい丸帯がきゅうきゅう鳴るので困るとか、他愛のないエピソードの連なりの中にぽとりぽとりと、幸子の夫(石坂浩二)が雪子に抱く、恋に似た感情が染みのように落とされます。その描写のエロティックなこと!
しっとりしたフィルムの風合い、4姉妹の個性を雄弁に表現した豪華絢爛な衣装は、着物だけでなく衿合わせの具合まで手抜かりなく、細部に目が行き届いていて、何度観ても飽きません。船場言葉による丁々発止の会話劇でもあり、2時間20分があっという間。もともとカット割りの細かい、テンポの早いモダンな作風が持ち味の市川崑監督ですが、冗長になりがちな文芸大作を、見事にクールにまとめ上げています。