「豊川さんとは33歳くらいの時「愛していると言ってくれ」ではじめてご一緒して、ふたりで役柄について侃々諤々とやり合っていました。
豊川さんは役にのめり込むタイプで、当時はそんな豊川さんに寄り添いたいと思っていたんです。
時は流れて、朝ドラでご一緒することになって、朝ドラだし、お互い年も年だし(笑)。以前よりは丸くなっているかな、と思ったら。33歳の時と同じテンションで一緒に秋風羽織を作り上げていってくれました。いやあ、人は変わらないと思いましたね(笑)。
でも、楽しかったです。あの秋風羽織のビジュアルは豊川さんが考えて、まず私に話してくれて、爆笑しました。モデルがいます。言えないんだけど。
秋風羽織には思い入れが深くて、彼のビジュアルを借りて、私のクリエイターとしての思いが、確信に満ちていくようなところがありました。
あんなにかっこいい豊川悦司が振り切って、一見、妙な漫画家、秋風羽織を演じてくれて。
しかも秋風羽織の集中が途切れないように、撮影中はNHKに近い渋谷のホテルに住んでいたそうです。あいかわらず役に対する思い、役者としての完璧主義は変わらない豊川悦司でした。そうして、秋風羽織は人気者になっていきました。
もう、このテンションでやるのは無理かな? と思っていたのですが、終わった時に豊川さんから、腰骨が折れるか、というほどの強い強いハグと(笑)、『還暦になる前に、一本やろうよ』というお言葉をいただきました。お互い、同級生なんです。まだ、懲りてないのかと思いつつ(笑)、すごく嬉しかったです」