「足掛け3年の印刷所の取材で知ったのは、こんなにいろんな人の手が加わっているんだということ。入稿データをパソコン上でDTPにしてアルミ板の刷版を作って印刷機にセットしてでっかい紙を手積みでフィーダー(給紙部)にセットして。本は機械でできているんだろうと思っていたら、紙を移したりセットしたりするのは人の手。そこを間違えると大量の紙のロスに繋がる。だから相当に神経を使うということを知りました」
そうしたプロセスを描く一方、どうしても触れずにいられなかったことがある。紙の本の衰退ぶりだ。
「どう贔屓目に見ても、紙の本はこれ以上、上向いていかない。本を愛する人に読んでもらいたくて書いているのに、その本が廃れていくことを書かなきゃいけない。ちょっと怖いところがありました」