『パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら』著者、中島たい子さんインタビュー。「わがままとは違う自己中心的な生き方もいい。」 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
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『パリのキッチンで四角いバゲットを焼きながら』著者、中島たい子さんインタビュー。「わがままとは違う自己中心的な生き方もいい。」

なかじま・たいこ●1969年、東京生まれ。多摩美術大学卒業。放送作家、脚本家を経て作家に。2004年『漢方小説』ですばる文学賞を受賞。著書に『ぐるぐる七福神』『院内カフェ』『がっかり行進曲』『万次郎茶屋』など多数。

撮影・千田彩子

中島たい子さんにはフランス人の親戚がいる。叔父がフランス人女性と結婚しているのだ。なんだかそれだけでうらやましいような気がするが、中島さんが子どもの頃から叔父家族はほぼ1年おきに日本にやってきて、夏休みを過ごすのが恒例だった。

「一家5人の食事を中学生の私が作ることもあって、皆が帰国するとああ、やっと夏が終わった〜、という感じでした」

でも中島さんがフランスへ行ったのは10歳の時の一度きり。フランスの洗練とかおしゃれなライフスタイルとかにはさほど興味がなかったのだという。

「でもアラフィフになって体力も落ちてきたし、生活を縮小していこうかなと考え始めていた時、ふと違う国の価値観に触れて見直したいと思ったんです」

そうだ、フランスにはタダで泊まれる叔父の家があるから行ってみよう。本書は中島さんが30数年ぶりに訪れたフランスで、普通の家庭に滞在したからこそ見えてきたフランス人の日常を、ユーモアたっぷりに綴ったエッセイ集だ。

「叔母・ロズリーヌの古い冷蔵庫の中には野菜がそのままゴロンと入っていて、人参なんかシワシワ。お手製のドレッシングはラップではなくて陶器の皿をのせて蓋代わり。彼女が作る四角いバゲットは、3分くらいこねて型に流し込む簡単なパンなのですが、手抜きみたいなやり方でもおいしいパンができるんですよ」

フランス人はおしゃれと言われているけれど、ロズリーヌの真っ赤なサングラスには、片方のツルにビニールテープがグルグルと巻かれていた。壊れちゃったけれど気に入っているものだからこれでいいということらしい。でもそれはそれでなんだかカッコイイ。

「他人の目を気にするのではなく、常に自分がよしとするか否かなんですね。休日はバスケットにBIOのワインとちょっといいチーズとバゲットだけを入れて近所の森へ行くんです。そこで大した話題ではないけれど延々とおしゃべり」

生活の中にも心の中にもいろいろなモノを詰め込みすぎないからこそ、風通しがよくなっていく。

「今の自分が頑張りすぎてつらくなっているのであれば、もっと自分勝手でもいいのではないか、と改めて思いました」

巻末には今回の旅で出合った四角いバゲットをはじめ、身近な材料で簡単に作ることができるトマトソースやドレッシングなどのレシピも掲載されている。

ポプラ社 1,400円

『クロワッサン』978号より

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