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大黒屋鎌餅本舗 山田充哉さんの、京都の時代をつなぐ日常の名店。生涯現役、店主の心意気

月日を重ねるほど美しい。70代の店主がしゃっきり気丈に迎えてくれる日常使いの名店とその心意気。

撮影・渡部健五 構成&文・中岡愛子

「まずは一つ食べてもらって。最近は無理しんとやってます。」

大黒屋鎌餅本舗 山田充哉さんの、京都の時代をつなぐ日常の名店。生涯現役、店主の心意気

大黒屋鎌餅本舗(だいこくやかまもちほんぽ)
山田充哉(みつや)さん
73歳

名物の鎌餅は、驚くほどすべすべのもち肌。求肥でこしあんを包み、黒糖の風味と香りがやさしい。

「細長いかたちは、草を刈る鎌。豊作を祈る、福を取り込むという縁起のいいもので、私とこが明治30年にここで店をやるまでは、京の七口(関所)のひとつ、鞍馬口の茶店でふるまわれていたそうです」

すりこぎについた求肥をそぎ続け、小さく変形した木ベラ。
すりこぎについた求肥をそぎ続け、小さく変形した木ベラ。

寺町通にある阿弥陀寺の門前にひっそりと佇み、現在は3代目の山田充哉さんが一人で切り盛り。

「初代は宮大工で、天皇陛下が東京へ移られて仕事が減って、お菓子を食べることが好きやったので、商売変えしたいうことです」と穏やかに話す山田さんの手元は、常にきびきびと動いている。蒸したもち米にざらめを加えて練り、とろ火であたためながらまた練って。

「大変なのはあんを炊くこと。朝7時半くらいから一日仕事で炊きますので」。そう言って山田さんは、できたての鎌餅をくっつかないように経木で巻いて、「まずは一つ食べてもらって」。

鎌餅1個260円。進物用の箱入りも。
鎌餅1個260円。進物用の箱入りも。

店頭に並ぶのは、鎌餅のほか、でっち羊羹、最中、懐中汁粉の4種類のみ。それぞれあんも異なる。お茶関係の常連客から、近所の大学生が「おやつに一つ」まで、気取らなさも魅力の小さな名店。

稲刈りの様子を描いた掛け紙。
稲刈りの様子を描いた掛け紙。

◆京都市上京区阿弥陀寺前町25 
TEL.075・231・1495 
営業時間:8時30分〜18時30分(9時30分〜10時30分は配達のため閉店) 
水・木曜休

『クロワッサン』1137号より

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