【時代をつなぐ日常の名店。生涯現役、店主の心意気。】京都・桔梗利 内藤商店 内藤幸子さん
月日を重ねるほど美しい。80代の店主がしゃっきり気丈に迎えてくれる日常使いの名店とその心意気。
撮影・渡部健五 構成&文・中岡愛子
「自然のもんに囲まれてご先祖さんに感謝してます。」
桔梗利(ききょうり) 内藤商店
内藤幸子(さちこ)さん
89歳
「これきれいでしょ? 鬼毛って言うてね、棕櫚(しゅろ)の皮のはしっこの硬い部分を一本ずつ抜いて、職人さんがきれいに合わせてつくってくださってね。一本買いなさったら、何十年と使えます」
強くしなやかな棕櫚の箒を手に「鬼毛は硬いので絨毯や畳、柔らかいほうはフローリング。でもどっちでも大丈夫ですよ」と楽しそうに続ける内藤幸子さんは、三条大橋のたもとで棕櫚の箒やたわしを扱う「内藤商店」の7代目おかみ。文政元年、1818年創業のこの店で、いまも元気にお客さんを迎える。
棕櫚、竹、黍(きび)、藁(わら)、豚毛、馬毛など「自然素材」を使った掃除道具を、職人による手仕事で。「ここでしか売らない」「使い方を説明する」という信念をやわらかに守り続け、細長い切り藁たわしを手にした外国人観光客に、「それはワイングラスにね」と英語を交えながらにこにこと説明。購入したものを紙に筆算で計算し、くるくるっと薄紙で包む。訪れた人を幸せにする内藤さんのここ数年の悦びは、
「27歳の孫がいま、和歌山の職人のところで修業中です。職人として9代目を継ぐって、よう言うてくれたとびっくりして、うれしかったですよ」
◆京都市中京区三条大橋西詰
TEL.075・221・3018
営業時間:9時30分〜19時 1月1日〜3日休み
『クロワッサン』1137号より
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