くらし

路地の隅々まで熟知しているガイドと共に、ドバイの下町グルメを堪能!

ミシュラン・ドバイが2022年スタートし、レストランシーンがかつてないほど盛り上がりを見せているドバイ。輸入食材に頼りがちだった砂漠の国から、地産地消を目指す方向へと舵も切られています。新しいレストランが続々と登場するなか、旧市街地には昔ながらの軽食が食べられる屋台や小さな店がたくさん!今回は、滅多に体験できないディープなドバイ下町グルメ体験をレポートします。
  • 写真・文 斎藤理子 ※文中のAEDはディルハムと読み、ドバイの通貨です。1AED=40.04円(2023年11月30日現在)

新市街地と旧市街地の真ん中に建つドバイ・フレームや、昔の街並みを再現したアル・ファヒディ歴史地区を散策。

ドバイと聞いてまず思い浮かぶのは、828メートルという世界一の高さを誇るドバイのシンボル〈バージュ・カリファ〉や、宇宙からも見えるという椰子の木の形をした人工島〈パーム・ジュメイラ〉、水族館やアイススケートリンクまである世界最大級のショッピングモール〈ドバイ・モール〉、世界最大の噴水〈ドバイ・ファウンテン〉など世界一を誇る最新の施設があふれている街というイメージ。

ザビール・パークというドバイでも最大の公園にそびえる、〈ドバイフレーム〉もまた額縁の形をした世界最大の建造物で、一方に新市街地、反対側に旧市街地を見渡せる人気スポットです。額縁をかたどった独特な建築物の橋梁部分の展望台はガラス張りになっていて、空中を歩いているかのような気分も味わえます。

ドバイ・フレーム。高さ150m・幅93mのドバイの街を額縁のように切り取るユニークな建造物。 上部が展望台になっている。
アル・ファヒディ歴史地区。曲がりくねった細い道を、伝統的な建築物が囲む。
アル・ファヒディ歴史地区のところどころにある風の塔(ウインド・タワー)。塔の四方にある穴から風を取り込んで階下の部屋を涼しくするという、クーラーのない時代に灼熱の気候を乗り切るためのアラブの知恵。
アル・ファヒディ歴史地区には〈シェイク・モハメッド文化理解センター(SMCCU)〉があり、エミラティ(ドバイに元々住んでいた人々)文化やドバイの歴史が学べる様々な講座が開催されている。

〈ドバイフレーム〉からほど近い旧市街地にある〈アル・ファヒディ歴史地区〉は、ここからドバイが始まったともいわれるエリアです。1900年代前半のものを中心に、古い建物を修復して保護している歴史保存地区で、迷路のような路地にアラブの伝統的な建築様式や装飾の建物が並んでいて、とてもエキゾチック。古い建物の中はリノベーションされ、ギャラリーやカフェ、プチホテルなどになっています。

運河を渡りオールド・ドバイへ。渡し船から見る新旧ドバイの街並み。

運河(ドバイ・クリーク)を渡るのには、〈アブラ〉という風情のある水上タクシーで。料金はひとりAED1。対岸にはあっという間に着くが、川面を渡る風が爽やかで快適。
ペルシア湾(アラビア湾)から引かれたドバイ・クリーク。無数のアブラが 行き交う。

近代化が始まる前のドバイは海のシルクロードの中継地点で、漁業や真珠採取産業を営んでいました。その中心となっていたのが、ペルシア湾(アラビア湾)から引かれたドバイ・クリーク。運河の南西側はバール・ドバイ、北西側はディラという地区で、ドバイの名所旧跡はこの2地区に集中しています。そこを行き来するのが、20名ほどを運ぶアブラという渡し船です。朝から晩まで無数のアブラがひっきりなしに行き来する様子は、ドバイの名物のひとつ。ディラ側にはスパイス店がずらりと軒を並べた〈スパイス・スーク〉があります。スークとはアラブ諸国の伝統的な市場のことで、異国情緒を楽しめます。

スパイス・スークでは初めてみるものも多数。興味がつきないディスプレイと品揃え。

よく知っているものから見たこともないものまで、実に様々なスパイスが並ぶスパイス・スークの店頭。
各店がそれぞれ工夫を凝らしたディスプレイをしていて、見ているだけでもまったく飽きない。
お茶用のドライフラワーを多数扱う店も。漢方薬的な効用があるものもたくさんある。

スパイス・スークは、ディラ側の船着場を降りてすぐのところにある、全長140mほどのアーケード商店街。スパイス、ハーブ、薬草、香木、ナッツ、ドライフルーツ、オイルなどを扱うお店が軒を並べています。どこも個性的な入れ物にスパイスを山盛りにしていて、とてもエキゾチック。際限なく写真を撮りたくなってしまいます。値段は交渉次第なところもありますが、事前に街中のスーパーなどでの価格を調べておけば安心。高価なサフランが思いがけない値段で入手できたりもします。クミン、ターメリック、コリアンダーシードなども日本よりは安価。基本的には安全に買い物を楽しめますが、一部のしつこい客引き(特に日本語での)にはご注意を!

スパイス・スークから出発する下町グルメツアー。ガイドブックには載ってない美味がたくさん待っている。

〈FRYING PAN ADVENTURESフライング・パン・アドヴェンチャーズ〉創業者の アルヴァ・サリーム・アーメドさん(右)。オールド・ドバイの路地の隅々まで精通している。
スパイス・スークのカフェテリアでは、注文後、四つ角のベンチで座って待っていると、飲み物とスナックを届けてくれる。
スパイス・スークのカフェテリアで購入したパロッタロールAED6。卵焼き、チーズ、チリソースをトルティーヤで巻いたもの。オマーンのポテトチップスもついてくる。
スパイス・スークの裏手にあるレガークというイランの薄焼パン専門店。職人が大きな鉄板で焼いているところ。
ザータルという中東のミックススパイスとチーズ入りのレガーク。AED10。パリパリでとても美味しい。
卵、チーズ、メヒヤワ(スパイスでマリネして発酵させたアンチョビソース)入りのレガーク。AED10。アンチョビの味わいが後をひき、手が止まらなくなる。
スパイス・スーク横にあるジューススタンドで、初めて体験したファルードというスイーツ。コーンシロップを麺の状態にしてから冷凍したものに、ローズウォーターとレモンシロップをかけたもの。AED5。

庶民の暮らしが息づくオールド・ドバイ。このエリアには、昔ながらのローカルな味を伝える屋台や小さな店がたくさんあります。ガイドブックには載っていないそうした店に個人で行くのは至難の技。そんな時にぜひ利用したいのが〈FRYING PAN ADVENTURESフライング・パン・アドヴェンチャーズ〉という食専門のツアー会社が主催する〈Dubai Souks and Creekside Food Walk(ドバイのスークとクリークエリア食べ歩きツァー) AED435〜〉です。

創業者のアルヴァ・サリーム・アーメドさんはオールド・ドバイ出身。店の1軒1軒、路地の隅々まで知り尽くしたエキスパートです。ツアーでは、アルヴァさんが厳選した、色々なジャンルのバラエティに富んだ美味しいものを食べ歩き。ただ食べるだけではなく、その食べ物のことからドバイに根付いた背景、文化に至るまで丁寧に解説してくれて、豊富な知識に圧倒されます。

インド人街を抜けて最終目的地の老舗ケバブ店へ。

インドの揚げ物を扱う店で埋め尽くされた細い路地。その中でも掛け声が一番面白かった店でパコラ(野菜のフリッター)3個とチーズフライを購入。AED4。よくわからなければ、予算を言えば袋に適当に詰めてくれる。
ツアーの最後は、老舗のケバブ店でディナー。ケバブ・ミックスプレート(3〜4人分)。AED140。チキンと大麦のスープ。AED7。
世界中から訪れる著名人と店主の写真で埋め尽くされた店内。
剣型の串に刺して炭火で焼かれるケバブ。

迷路のような細い路地が続くインド人街では、揚げ物ストリートに突入。路地の両側がインドの揚げ物店で埋め尽くされていて圧巻です。一般の観光客が絶対に来られないようなこうした場所も、アルヴァさんと一緒なら安心。何を言っているのか全然わからないけれど絶え間なく続く呼び込みの声のリズムが面白く、揚げたてのパコラも美味です。道中には、モスクの隣にヒンズー寺院がある広場があり、ドバイの宗教的寛容さを目の当たりにすることもできます。

いろいろ食べて歩いて足もお腹もそろそろ疲れてきたところで、最終目的地の老舗ケバブ店へ。マトンやチキンは特製のヨーグルトソースでマリネされて柔らかく、マトンのミンチのケバブはジューシー。炭火で焼かれて薫香をまとい、ひとくち食べる度にああビールがあればと思います(ドバイのローカルな店では基本的にアルコールは置いていません)。相当お腹がいっぱいになっているはずなのに、名店の焼きたてケバブが美味しすぎてペロッといけてしまうのが嬉しいやら恐ろしいやら。満腹のお腹をさすりながら、美味な夜がふけていきます。

注:各店名は参加者のみに紹介なためここには記載できませんが、興味がある人はぜひツアーに参加してみてください。通常のツアー料金AED435は最後のケバブレストランがアラブ料理レストランになります。料金はツアーガイド、すべての食事、付加価値税込み。カスタマイズもできるので(今回のケバブレストランはカスタマイズ)、申し込み時に相談を。

ドバイの様子を動画でちょい見せ。

斎藤理子

斎藤理子 さん (さいとう・りこ)

フードジャーナリスト

雑誌編集者を経てロンドンなど海外に長年住み、その間世界各国を食べ歩く。現在は国内外の生産者から三つ星シェフ、立ち飲みまで広く取材し執筆。著書に「イギリスを食べつくす」(主婦の友社)、「隣人たちのブリティッシュスタイル」(NHK出版)など。編著に『アル・ケッチァーノ』奥田政行シェフの連載をまとめた「田舎のリストランテ頑張る」(マガジンハウス)。2011年英国政府観光庁メディアアワード受賞。やまがた特命観光・つや姫大使。

《協力》
ドバイ経済観光庁:https://www.visitdubai.com/ja
Facebook:https://www.facebook.com/visitdubai
Twitter:https://twitter.com/visitdubai_jp
Instagram:https://www.instagram.com/visitdubai.jp/?hl=ja

※文中のAEDはディルハムと読み、ドバイの通貨です。1AED=40.04円(2023年11月30日現在)

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