くらし

終活で断捨離はせず「行き先リスト」を作り、好きなものに囲まれて暮らす。

「終活」というと、暗くて重いイメージがありますが、これからの人生と向き合い、楽しみながら進め、充実した日々を送っている人の方法を紹介。
  • 撮影・青木和義 文・嶌 陽子

「ものの行き先リスト」で愛用品を友人たちへ引き継ぐ。

家具や器などの写真を「物達の行き場所」ノートに貼る作業中。「写真があれば、自分だけでなく、誰が見ても分かりやすいだろうと思って」

「物達の行き場所」と表紙に書かれたノートを見せながら「これが私の終活」と話す石原左知子さん。自宅にある家具や小物、食器などを自分の亡き後に誰に譲るかが、その人の連絡先と共に書かれている。

「我が家に遊びに来た人に『欲しいものがあったら言ってね』と声をかけて『これが欲しい』って申告してもらうの。それぞれの趣味があるから、押し付けたくはなくて。ごくたまに『これは絶対この人に似合う』って逆指名することもあるけどね」

「断捨離」はせず、最後まで 好きなものに囲まれて暮らす。

石原さんの「物達の行き場所」ノート。ものと譲る相手、連絡先を一覧にして。写真も添えれば一目瞭然に。

ものを整理するきっかけは、50代の時に親しい友人を亡くしたこと。遺族から頼まれて遺品の整理をした際、その大変さを思い知った。

「本人や家族にとっては大切なものでも、他人からすれば不要なものがほとんどだなって。特に困ったのが写真。その後自宅に帰って、さっそく我が家の写真も大量に処分しました。その時に思ったの。子どもがいれば子どもに任せればいいけど、うちは夫婦2人だから、ある程度ものを整理しておこうって」

ただし、いわゆる「断捨離」はしないのが石原さん流。今も少しずつ「生前贈与」という形でものを人に譲っているとはいえ、すぐに全てを手放すつもりはないという。

「ここにあるのは全部自分が気に入って手に入れたもの。最後まで好きなものに囲まれて暮らしたい。かといってものに執着しているわけではなく、いい形で循環させたいの。私がいなくなった後、それぞれのものがそれを欲しいと思う人のところへ行って、その人が喜んでくれたらうれしいなと思うんです」

将来の行き先が決まっているから気持ちも楽に。今は愛着ある品々との暮らしを心置きなく楽しんでいる。

家具や小物、食器など、ものは欲しい人へ譲る申告制。

人の出入りが多い石原さん宅。遊びに来た人にはいつも「欲しいものがあったら今のうちに言って」と声をかけ、申告があったものはリストに書き加える。ディレクターズチェアや樽型スピーカーはすでに行き先決定。食器もそれぞれ好きな友人たちにもらわれる予定。

好みのモチーフや素材、作家ごとひとまとめにして譲ることも。

エッフェル塔やエンパイアステートビルなど、自宅には石原さんが好きなモチーフのオブジェがいくつもある。それらは「エッフェル塔はこの人に」というように、まとめて譲る予定。「たくさんあるアイアン素材のオブジェも全て友人のデザイナーに譲ります」

もらい手を逆指名してサプライズする楽しみも。

時には譲り先を石原さん自身が決めることも。 「3つあるエルメスのバッグも、それぞれ譲る相手を決めてリストに書いています。サプライズにしたくて、本人たちにも内緒にしてるの」

靴はフリマで売ってもらい、売り上げを寄付する予定。

「野菜と一緒で旬や鮮度がある」という靴は、事前に譲り先を決めたりしないことに。「フリマで売ってもらい、医療系のNPO法人などに寄付してほしいという希望をリストに書いています」
石原左知子

石原左知子 さん (いしはら・さちこ)

「シャビージェンティール」主宰

1950年生まれ。ファッション&インテリアプロデューサーとして活躍。著書に『自由にたのしく年を重ねる』など。

『クロワッサン』1099号より

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