くらし

親のお金の管理問題、6つの「こんなとき、どうする!?」

自分の老後のお金も心配だが、並行して気にかけないといけないのが親のお金の管理。
ファイナンシャルプランナーの山田静江さんに教わります。
  • イラストレーション・村上テツヤ 文・生島典子

[Case study1]親が施設に入居し、実家が空き家となり数年経ちました。どうすればいいでしょうか。

空き家を長年管理するには、家を1軒建てるくらいの費用がかかることもあります。空き家の状況によっては火災保険に入れないケースも多く、入れても補償は少なくなりがちなので早めに売却を検討したほうがいいでしょう。

売却した現金を親のために使える状態にすると、子どもたちが介護費用を負担しなくてはならなくなるのではないかという不安を軽減できます。

なお、相続した空き家を売る場合には、いわゆる空き家特例という税金の優遇措置があります。相続により取得した亡くなった方が住んでいた家の敷地を、2027年12月31日までに売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3000万円まで控除することができます。

空き家は管理する費用がけっこうかかる。売却したお金を親が使えるようにするのも得策。

[Case study2]親が借金をして亡くなったら、遺族が払わないといけないのでしょうか。

みなさん勘違いしていますが、親の借金は親が亡くなった時点であなたを含む相続人の借金です。法定相続分の借金については、自動的に引き継いでしまうということです。

自分の借金なら、自分が返さないといけないことは理解できると思います。この場合、借金だけいらないということはできないので、借金を引き継がないためには、相続放棄して財産もすべていらないという手続きをする以外に方法はありません。

相続放棄を選択するかどうかを考えるにあたっては、相続財産の資産と負債の金額を把握しておく必要があるでしょう。ただし、相続放棄をしても、生命保険の保険金や遺族年金など、受け取れるものがいくつかあります。

親の借金はそのまま相続人の借金になることを理解しておこう。

[Case study3]そこそこいい施設に親を入居させましたが、資産が尽きたらどうしよう、とヒヤヒヤしています。

まずは、今の施設にどのくらいの期間いられる収入と預貯金があるのかを確認しましょう。そのうえで、持ち家があれば家を売却することを検討してください。

家を売却せず「どうしよう?」と考えてしまう人が多いのですが、親の財産として家を売って現金にしたほうがいいと思います。家が残って相続でもめるくらいなら、売って親に使ってもらい、残ったらきょうだいで分けるのがいいでしょう。例えば、家を売って2000万円の手取りになれば、年間200万円ずつでも10年は使える計算になります。

費用をまかなえそうにないのであれば、土地代や人件費が安い地域の施設に移すことも検討しましょう。

[Case study4]きょうだいが3人いますが、持ち家のない弟が実家を相続したほうがいいのでしょうか。

持ち家のない人が相続すると、小規模宅地等の特例が適用されて相続税が軽減されるということを踏まえての質問だと思いますが、相続のときには税金対策を優先させないほうがいいと思います。

まだ相続税がかかるかどうかもわからないし、実際には誰が自家を相続して活用するのがいいのかを考えましょう。自家に住みたくない弟が相続しても、実際に家を使うのが別のきょうだいになるのなら、その人が引き継いだほうがあとあともめることを避けられます。

もし、誰も自家を使わない場合は、売却して現金化してから相続人で分けるなど、処分を先延ばしにしない方法がいいでしょう。

小手先の税金対策よりも、本当は誰が引き継いで活用するのがいいのかを考えよう。

[Case study5]妻が義父母の介護を担っていた場合、遺産分割できるようになったってホント?

遺産分割に参加できるようになったのではなく、相続人に介護を担った分を請求できるようになったということです。

請求してもそれほどもらえるわけではないので、介護をした分の報酬を1日いくらと決めて、できれば生前に義父母からもらっておいたほうがいいでしょう。その分のお金を出してくれないのなら、介護は外注してもらって、働きに出たほうがいいと思います。稼いだ分は自分のお金になりますが、介護に使った時間は戻ってきません。

妻は相続権がないので、夫が先に亡くなってしまうと義父母の財産をもらえる見込みはありません。夫亡き後も義父母の面倒を見る覚悟があるのなら、養子縁組を検討することをおすすめします。

妻は、夫が亡くなると義父母の財産を相続できない。

[Case study6]高齢の親が一人暮らしで詐欺に遭わないか心配です。どんな対策をとれば いいでしょうか。

最近は、オレオレ詐欺よりもリフォーム詐欺のほうが深刻です。必要のないリフォームを契約させられて代金を請求されるパターンで、近所の人が親切なフリをして業者を連れてきて被害に遭うという怖い事態になっている場合も。

お金の管理でいちばん大事なのは、親の人間関係を知ることです。子どもは実家に頻繁に立ち寄って周りの人にあいさつをして、変な人が出入りしていないかをチェックしましょう。子どもがいないとか、遠方でなかなか帰ってこないと狙われやすくなります。

親が詐欺に遭ったことを知っても怒ってはいけません。詐欺に遭っていちばん傷ついているのは親です。大事なのは、親のプライドを傷つけないこと。そうすると信頼していろいろ話してくれますが、怒ると黙ってしまい、何も相談してくれなくなります。

山田静江

山田静江 さん (やまだ・しずえ)

ファイナンシャルプランナー

終活アドバイザー。老後のマネープランや相続など、人生後半の問題に力を入れている。著書に『よくみえる! 医療・介護のはなし』などがある。

『クロワッサン』1096号より

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