くらし

見える収納で食材を残さず使い切る、松田美智子さんの冷凍冷蔵の方程式。

常に美しく整理されている、料理研究家の松田さんの冷蔵庫。
そこには長年の経験から生み出された数々の知恵と工夫が詰まっていました。
  • 撮影・荒木大甫 文・嶌 陽子

方程式(1) 「コの字収納」が冷蔵庫の鉄則です。

【扉を開ければ全てが一目瞭然。】仕事柄、食材が多いため、ミーレの冷蔵庫を2台並べて置き、ドアの取っ手を1台は左側、もう1台は右側に。観音開きになるようにして出し入れをスムーズに。

レシピの撮影や料理教室など、仕事柄、どうしても食材が増えがちな松田美智子さんの冷蔵庫。

それらをいかにおいしく食べきるかを長年考えてきた結果、たどり着いたのが現在の方程式だ。その土台になっているのが、もう数十年続けている「コの字収納」。

冷蔵室の上部の棚3段分は、コの字型に保存容器などを並べ、中央のスペースは常に空けるようにしている。

冷凍室はタテ収納がルール。「引き出しを開けた時に全てを見渡せます」。真空パックにした肉や魚をはじめ、チーズやナッツなども冷凍。

「奥のものもすぐに見えて取り出しやすいので、食材を無駄なく使い切ることができます。それに真ん中のスペースが空いていると、鍋やケーキといった、大きなものをすぐに置くことができるんです」

収納にゆとりを持たせることで庫内の冷気もよく回り、冷蔵庫がしっかり機能する、と松田さんは話す。

余ったおかずなどが入った保存容器をコの字型に並べて。奥のものもさっと取り出せる。「真ん中を空けておけば、夏場はスイカなどもすぐに置けます」

「冷気をきちんと回し、上手に保存することで食材の持ちは大きく違ってきます。自分の冷蔵庫の冷気がどこからどう流れているのかを一度確認しておくのもおすすめ。これから暑くなる季節、冷蔵庫を賢く使えば食材を無駄にせず、節約にもなるはずです」

方程式(2) 買ってきた野菜は必ず下処理してから野菜室に、が習慣。

ブロッコリーは塩水で茹でてから水気をよく絞り、ペーパータオルを敷いた容器に入れて。かぶは、葉を切り分けて別々に保存。

買ってきた野菜をそのまま野菜室に入れるのではなく、素材ごとに適した下処理をしておくことで、鮮度を保つことができるという。また、野菜の保存に欠かせないのがペーパータオルだ。

茹でたブロッコリーはつぼみを下にして水気を絞り、ペーパータオルを敷いた容器に。つぼみを下にして水気を吸い取らせるのがコツ。

「惜しまずにたくさん使って、野菜をしっかり包みます。余分な水分を取り除くためと、乾燥を防ぐため。これをきちんとしておくと、日持ちが全然違ってきます」

ひと手間はかかるものの、「習慣にしてしまえば何でもない」と松田さん。

「何より、この下処理をしておくと、野菜がおいしく食べられるんです」

かぶは葉がついたままだと水分や養分が吸い取られるため、切り落として別々に保存。ペーパータオルで包んでからビニール袋に。葉物やトマトなどの比較的デリケートな野菜と、根菜やねぎなどを分けて保存している。かぶも、葉を分けたら別々の引き出しへ。

方程式(3)肉や魚は下味をつけて真空パック冷凍に。 鮮度が段違いです。

数年前に購入し、大活躍しているというのが食材を真空パックにする機械。

「まとめ買いした肉や魚を真空にして冷凍するようになりました。そのまま冷凍するのとでは、鮮度の良さが全く違います。肉も買った時と同じ赤さのままだし、味も落ちません。ソーセージやジャムなども真空保存しています」

愛用しているのはスイスの「ソリス」社の真空パック器。「パックの袋はロール状で、必要な大きさに切ることができます」

松田さんがよくしているのが、下味をつけてからの真空保存。肉や魚を塩やレモン汁、ハーブなどでマリネしておけば、食べたい時にすぐに焼いたり温めたりするだけですむ。

鶏胸肉は塩とレモン汁、ローズマリーで、鮭は塩で下味をつけてから真空パックに。日付と食材や調味料の名前は必ず書いておく。

「真空パックをするようになってから、冷凍庫の収納力が倍になりました。薄く立てて収納できるので、見やすく、取り出しやすいのも便利。今や我が家のキッチンには欠かせないツールです」

冷凍庫に立てて入れる際は、衣類収納に使われる布地の収納ボックスが活躍。「柔らかく、食材の形に合わせられるので入れやすいです」

方程式(4)残り物を無駄なく使い切るには、小型容器が最適。

残ったおかずやソースは、すぐに食べるものはプラスチックの保存容器に、それ以外は小型のガラス容器に保存。

「お皿にラップをかける方法だと場所をとるし、中身がよく見えず、放置してしまいがち。ガラス容器は横から中身がよく見えるので最後まで使い切れます。さらに、重ねて収納できるので庫内にスペースができるのもメリット。ヨーグルトや納豆などのパッケージも1つずつ重ねて置いています」

「WECK」のガラス容器に余ったおかずやソースを入れて。量が少なくなってきたら、すぐに小さな容器に移し替える。

ガラスの保存容器にはさまざまなサイズがあり、残り物の量が減るたびに、より小さな容器に移し替えている。

「空気に触れる面を少なくすると、その分傷みも遅くなります。また、移し替える過程で残りの量や状態をチェックできるのもポイントです」

ヨーグルトのパックは1つずつ切り離し、納豆のカップも外包装のビニールを外して重ねて収納。見た目もすっきりし、取り出しやすい。

方程式(5)豆腐やこんにゃく、 乾物も冷凍保存しておいしく活用します。

松田さんの冷凍庫には、余った豆腐やこんにゃくなども保存されている。

「冷凍すると水気が抜けて、味がよくしみこむようになるので、炒り料理にぴったり。おすすめの方法です」

ほかにもチーズやナッツ、中華食材、乾物なども冷凍保存。中でも干しエビと干し貝柱は冷凍必須だという。

豆腐やこんにゃくは、残ったら迷わずに冷凍保存。真空パックにすることも。「より水分が抜けて、味がよくしみこむようになります」

「どちらも油分が含まれているので、常温で置いておくと酸化してすぐに傷んでしまうんです。冷凍すれば鮮度を保つことができますよ」

どんな食材も、しっかり空気を抜いて冷凍保存するのが鉄則。ここでも真空パック器が活躍中だ。

干しエビと干し貝柱は常温で保存していると油がまわってしまうので必ず冷凍。真空パックにするなど、なるべく空気を抜いてから。

方程式(6)調味料やスパイスはガラス容器に入れて一目瞭然に。

にんにく醤油、梅醤油、マスタード、オイスターソース、ケイパー等々。常備している調味料や食材は、揃いのガラス容器に保存。ラベルを貼って見える化を徹底したうえで、冷蔵庫のドアポケットに重ねて収納している。仕事柄、たくさん種類があるスパイスも容器を統一して1カ所に収納。目当てのものが探しやすい上、目にも心地いい。

常備しているスパイスは40数種類。同じサイズの「WECK」の蓋付きガラス容器に入れ、重ねて収納している。さらに保存しているスパイスを一覧にした紙を一緒に収納。必要なものがある時は、まずはこのリストを確認する。たくさんの種類を管理するためのひと工夫。

「冷蔵庫に収納する際は、鮮度やおいしさを保つのと同時に、見た目の美しさ、そして分かりやすさも大事にしています。保存容器もシンプルな色やデザインのものが基本です」

食材や調味料が整然と並んでいて、ほしいものがさっと手に取れる。そんな冷蔵庫は、きっと日々の料理のモチベーションを上げてくれるはず。

常に欠かせない調味料や食材の保存には、密閉性が高く、蓋がスクリュー式の「チャーミークリア」の容器を愛用。スタッキングもできて、冷蔵庫のドアポケットにきれいに収まる。

方程式(7)気になるにおいの対策は、手作り&市販の消臭剤で。

さまざまな食材を保管しているだけに、気をつけないと発生してしまう冷蔵庫のにおい。

「特に我が家のキッチンはダイニングやリビングとひと続きになっているので、においは絶対に避けたいんです」

そこで日頃から庫内をこまめに掃除して常に清潔にしたうえで、さらににおい対策として消臭剤、脱臭剤を設置。現在愛用しているのが、ドイツ製の消臭剤、そしてコーヒーかすを使った松田さん手作りの脱臭剤だ。

「ドリップした後のコーヒーの粉を乾燥させてから不織布で包んでいます。小さいので庫内の隙間に置けますよ」

右はドイツのジロンカ社の「スメルキラー」という商品。ステンレス合金が水に接触することでにおいを緩和するというもの。左は松田さんお手製のコーヒーかすを使った脱臭剤。不織布で丸く包んで可愛い姿に。両方とも手のひらサイズで、冷蔵庫内でかさばらない。
松田美智子

松田美智子 さん (まつだ・みちこ)

料理研究家

近著『家庭料理は郷土料理から始まります。』(平凡社)ほか著書多数。調理道具「JIZAI」をプロデュース。m-cooking.com

『クロワッサン』1095号より

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