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ボニー・レイットによる臓器移植をテーマにしたグラミー賞受賞作【高橋芳朗の暮らしのプレイリスト】

臓器移植をテーマにした本年度グラミー賞受賞曲。

世界最大規模の音楽の祭典、第65回グラミー賞授賞式が2月5日にロサンゼルスで開催されました。今回のセレモニーではビヨンセの歴代最多受賞記録更新、キム・ペトラスのトランスジェンダー女性として初のグラミー賞受賞などが話題を集めましたが、そんななか最大のサプライズとなったのがボニー・レイット「Just Like That」の最優秀楽曲賞受賞でした。

並み居る強豪を抑えて栄冠を手にしたボニーは50年の活動歴を誇るカリフォルニア出身のブルース歌手。昨年のグラミー賞では特別功労賞を受賞しているアメリカ音楽界のレジェンドです。

そんなボニーが「Just Like That」で歌ったのは、事故死した息子の臓器提供に踏み切った母親をめぐる奇跡。我が子を失って悲嘆に暮れていた彼女が心臓移植を受けて生き延びた男と出会うことにより、思わぬかたちで息子と「再会」を果たす傷心と希望の物語です。

「一瞬で人生は変わるもの/ほら、天使の贈り物を見て/彼の胸に頭を置いたら/愛する息子と再会できた/ずっと暗闇にたたずんでいた私/この夜が明けるなんて思えなかった/でも、ようやく恵みが訪れたのだ」

実話をベースにして、美しい愛のストーリーを紡いだボニー。今回最優秀楽曲賞にノミネートされた10曲中、アーティスト自身が単独で書き下ろした曲は「Just Like That」のみでした。

ロックの殿堂入りも果たしたボニー・レイット『Just Like That…』。表題曲のほか全10曲収録。
ロックの殿堂入りも果たしたボニー・レイット『Just Like That…』。表題曲のほか全10曲収録。
  • 高橋芳朗 さん (たかはし・よしあき)

    音楽ジャーナリスト

    著書に『ディス・イズ・アメリカ「トランプ時代」のポップミュージック』(スモール出版)など。

『クロワッサン』1090号より

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