この「大工調べ」という噺、あらすじではご紹介し切れない聞きどころがあります。それが棟梁が大家に切る啖呵です。普段から威勢がよく喋る江戸っ子がさらに高速で、まさに〝火を吹くような〞という形容がぴったり。高座で演者が胸のすくような啖呵を披露できれば、お客さまも溜飲を下げて拍手喝采してくれます。
この演目、棟梁の啖呵を真似た与太郎があたふたする場面で笑ってもらい、噺の半ばで終わらせることがほとんどです。その後のお奉行様によるお裁きの場面は「面白くない」というのが通説。しかし私見なのですが、その後半もきちんと演じるとあら不思議、痛快な裁判での逆転劇となり、前半と合わせて〝一席で二度美味しい〞噺になります。
今も昔も市井の人々にとって、寄席が日常の憂さを晴らす場所であってもらいたいですね。