人間は誰でも表と裏の顔を持ち合わせていると思いますが、この噺の番頭さんほどギャップの大きい人はなかなかいません。
それがバレてしまったときの狼狽ぶりは気の毒を通り越して滑稽なのですが、それをすべて飲み込んだうえで受け止めることのできる器の大きなご主人は、現代でもまさに理想の上司・社長像でしょう。
このネタで『人を育てる』ということについて考えさせられるお客さまも多いようで、ある師匠の『百年目』を聞いていたく感動し、党派を超えて落語を楽しむ国会議員の集まりを作ってしまった先生までいるそうです。
とはいえあくまで落語なので、あんまり感動にばかり比重を置かず適度に笑っていただきながら演じて、肩の凝らない落語日和をご提供できたらいいなと思います。