くらし

豊かで冷たいフィヨルドの海から、ノルウェーの旬の恵みを受け取る。

寿司のサーモン、脂の乗った塩サバ。どちらも日本の食生活に欠かせない存在。実は大部分がノルウェーから来ています。美味しさの理由を、現地獲れたてレポート。
  • 取材協力・ノルウェー水産物審議会

「日本の皆さんは、ノルウェーを遠い国だと思っていませんか?」と、トロムソ大学経済学部研究者のビヨーン・E・オルセンさん。

海を網で区切った、サーモンの養殖おり。国によって水温や水の流れ、水と魚の量の比率も決められていて(水97.5%、魚2.5%)、のびのび泳げるようになっている。写真の人物はビヨーン・E・オルセンさん。

「日本とノルウェーは国土面積がほぼ一緒。ともに南北に長い地形で、ユーラシア大陸を挟んで東西で向かい合うように位置しています。豊かな海洋資源に恵まれ、古くから漁業で発展してきたことも同じで、これはもう、きょうだい国と呼んでいいくらいです」

ホフセット社のサーモン。水深400mのフィヨルドの海中に作られた養殖おりで育てられている。

ノルウェーの水産物輸出量は世界第2位、そして日本は世界第2位の水産物輸入国。

「ですから、私たちふたつの国がもっと親しくなるのに、じゅうぶんな理由があるでしょう?」

【サーモン】澄んだ冷たい水でのびのび育って美味しくなる。

みんな大好き、サーモンの寿司。回転寿司のネタの人気調査で、11年連続第1位(2022年マルハニチロ調べ)。使われる生食用アトランティックサーモンの73%がノルウェー産だ。フレッシュなまま冷蔵で空輸されてやってくる。

始まりは35年前。日本の魚食文化に着目したノルウェー政府が、プロモーション「プロジェクト・ジャパン」を起動した。前出のオルセンさんもその一員で、主要ミッションは生食用サーモンの提案。鮭は加熱調理が一般的だった日本に、それまでサーモンの寿司はなかったのだ。

ノルウェーのサーモンが生食可能なのは、乾燥餌で養殖されるので、寄生虫がいないため。水質・水温などの養殖環境も国が厳格に定めている。「育つときにストレスのないサーモンは美味しくなります」とホフセット社のカリーナ・ローケンさん。

(右上)鮮度を保って地元の加工場に運ばれる。(右下)生食用のほか、スモークサーモンも世界中で人気。美しい色! (左)水産業は国の基幹産業の一つ。女性の従事者も多い。

【サバ】いちばん美味しい旬のサバだけを獲る。それが持続可能(サステイナブル)の道。

じゅわっと脂たっぷりの焼きサバ、手軽で食べやすいサバ缶。日本でのサバ人気は衰え知らず。しかし日本沿岸では近年サバの不漁と小型化が続いていて、流通する塩サバはノルウェー産がじつに7割を占める。その人気の理由は、大きさと脂乗りのよさ。

(右)ノルウェーのサバ漁は、電子オークション方式。魚を獲ったらすぐにデータを公開して、買い手を募る仕組み。まだ海上に船がいる状態で買い付け業者が決まる。船が直接加工場に向かうので、最短時間で水揚げすることができる。ノルウェーのサバ輸出量は世界一で、その約50%が日本に行く。(左)ノルウェーの水産業の都・オーレスン。首都オスロから北西に500キロ、アールヌーボーの建築物が立ち並ぶ美しい町。多くのサバ加工場が海沿いに位置する。

「ノルウェーでは、サバは最も脂が乗り魚体が大きくなる9月から12月の間にだけ漁獲されます」と、ノルウェー水産物審議会のヤン・E・ヨンセンさん。

「北大西洋のサバは、資源保護のため国際的な管理計画により保全されていて、漁獲量の上限が各国に割り振られています。定められた漁獲枠の中でベストシーズンのみに狙いを定めて漁をすることで、サステイナブルを保ちながら、美味しいサバを提供できるのです」

(右上)水揚げされたてのサバ。ピカピカです。(右下)日本向けの塩サバ。国内第2位のニルススペレ社の製品。(中)品質チェックも丁寧。(左上)マイナス24度の大型冷凍庫。(左下)スーパーに並ぶカラフルなサバ缶の棚。

『クロワッサン』1081号より

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