くらし

母娘というより、暮らしも旅も〝よき相棒〟。京都新聞記者、行司千絵さんと母との距離感。

親子は、年齢や職業や環境によって、独特の関係性をじっくり時間をかけて築いている様子。悲喜交々、楽しく語ってくれました。
  • 構成と文・寺田和代

娘が作る服でおしゃれを楽しむ母。 旅と生活のよき相棒でもあります。

行司さん作の服を着る母。右から順に、白ジャンパースカートのポイントは丸めがね、端切れをつないだ麻のドレス、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の布で作ったジャンパースカート、ウールのジャンパースカート。(写真提供・行司さん)

新聞記者として多忙な毎日を送る傍ら、自分や母・美知子さん(85歳)の服を手作りする日々を綴った著書『服のはなし』がロングセラーになった行司千絵さん。父亡き後、3LDKの集合住宅で母娘2人暮らしを続けている。

「LDKを共有し、3部屋はそれぞれの寝室と本や布の置き場に。空間を自然と分け合い、互いの姿が目に入っても個々に好きなことを黙ってしているので気になりません」

「母というより〝美知子さん″の尊厳を 大切に、うまく暮らしていきたい。」

昔から娘の意思を尊重し、したいことを応援してくれる〝重くない〟母だった。

「交友関係や進路に口を出されたり、女の子だからとか、結婚は?みたいなことを一度も言われたことがありません。専業主婦でしたが、読書や洋裁など好きな世界を一人で楽しめる人で、人間的な相性もよかった」

家事は自然とシェア。料理は毎週金曜にまとめて買う無農薬野菜の内容を見て1週間分の献立を2人で考え、平日は母が、週末は行司さんが受け持つ。

「食べ物の好みが似ていることも楽に暮らせる理由かも。私は数年前に体調を崩したことを機に食事を見直し、食材は有機のもの中心、白米を玄米に、出汁を丁寧にとって味付けは薄めに。高齢の母と食の嗜好も近づきました」

日用雑貨の買い物や水周りの掃除は娘、掃除機がけなど転倒リスクや体への負担が少ない家事は母が毎日担当。

暮らしの好みが似ている母娘。行司さんが服作りを始めたきっかけも、忙しい日々の中で小さな頃から母が服を手作りしてくれた記憶が安心感とともに蘇ったからだ。服作りには仕事のストレスから解放される面もあり、これまでに作った服は約300着にも。その服をもっとも魅力的に着こなす一人が母でもある。

「もともとおしゃれに関心がある人で、ぶっとんだアイデアも面白がってくれる。服に合わせたコーディネートは母自身が楽しみながらしています」

母と9歳の行司さん。子ども時代の行司さんと姉の服はほぼ母の手作り。当時から家族でよく旅行していた。「今は、千絵が私の思いつかないような服を作ってくれて楽しいわ。」(母・美知子さん)「女の子っぽいお出かけ用ワンピース、ちょっと苦手やったな…。」(娘・千絵さん)

この20年間で40回以上、好きな海外旅行も2人で楽しんできた。

「母との初海外旅行は私が20代の頃。タイへのツアーに一緒に参加するはずの友人が行けなくなって、母に、行く?と訊いたら、行く、と。その後、ツアーでなく2人だけで個人旅行に挑戦した時も互いに無理せず楽しめました。母は私以上に体力があるし、旅先では観光や買い物より地元の人に混じってのんびり過ごしたい気持ちも似ている。これはイケる、となって以来、年2回、母と2人で海外を自由に旅するように」

母娘というより、暮らしも旅も〝よき相棒〟のよう、と行司さん。

「85歳という母の年齢も忘れてしまうこともあるほど。お互い健康でありがたいです。この先、母に介護が必要になっても、母というより〝美知子さん〟の意思と尊厳を大切に、うまく暮らしていけたらと思っています」

行司千絵

行司千絵 さん (ぎょうじ・ちえ)

京都新聞記者

1970年、奈良生まれ。同志社女子大学卒業後、新聞記者をしながら独学で洋裁を習得。『母と私の服』など個展を多数開催。著書『服のはなし』ほか。

『クロワッサン』1050号より

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