くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】地方のゆるい仕事に満足できなくなってきました。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回は仕事のやりがいを求めて都内に引っ越そうか迷っている男性からの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>

地方都市にある中堅の広告会社に勤めているものです。現在42歳、2歳と6歳の子がいます。元は都内の制作会社でキャリアを積んでいたのですが、比較的自由な意志で制作に携われることや地方での子育てや生活に憧れて転職しました。現職は福利厚生もしっかりしていて、普通に暮らすには充分な収入があります。小さい仕事ですが望みの制作に携わることもできています。しかし、都内でやっていたような大きな仕事はないし、仕事そのものがゆるくて満足できなくなりました。この歳になって、もう一度都内に戻って大きな現場で働きたいと思う一方それはただの未練に過ぎないと感じる事もあります。今ある安定を捨てて多少ブラックですが都内の制作会社に戻るか、家族を安心させるため今の生活を維持するか悩んでいます。
コロナ禍で都会を離れた地方暮らしが持ち上げられる昨今の情報もちらつき、答えがでません。何かアドバイスをいただけないでしょうか、よろしくお願いします。

(がんしゅう/男性/広告制作40代会社員。2歳と6歳の子。)

山田ルイ53世さんの回答

都内の制作会社(“古巣”でしょうか?)へ出戻るか、それとも、“安定した”現状を維持するのか。
人生の岐路に立つがんしゅうさん。
これは……申し訳ない。
芸歴20年を超え未だ“安定”とは程遠い筆者。
「十分な収入」、「しっかりとした福利厚生」など魅力的な条件をブラ下げられると、冷静な判断は難しいかもしれません。

ただ、住いこそ東京ですが、ラジオ番組のレギュラーのため、週に1度の甲府詣でをかれこれ8年以上欠かさぬ身。
コロナ禍以前は、ショッピングモールやお祭りのステージで漫才を披露する、“地方営業”で全国を飛び回っていましたので、相談者の仰ることもある程度は理解出来ます。

確かに、「東京」と「地方」では何かと違いがある。
しかし、それは大抵の場合、お金の問題に集約されます。
文面にある“仕事の大小”や“ゆるさ”というのも、結局は予算の多寡に応じてそれぞれのやり方がある、というだけの話ではないでしょうか。
そもそも、
「ゆるいな~……」
と職場を俯瞰できるほどの能力も余裕も筆者にはありませんが、いずれにせよ、「東京>地方」などという視点は、とっくに過去のもの。
以前、とあるローカル局で、
「こんなの東京じゃあり得ない!」
とスタッフの方々を叱責し、挙句番組を降板していった“非常に限られた界隈で著名な人”の話を耳にしましたが、実に幼稚で滑稽なマウンティングと言えるでしょう。

ちなみに、先述の“山梨のラジオ”には、スマホアプリやSNSのお陰もあって、沖縄から北海道まで全国のリスナーからお便りが届きます。
手前味噌かつ、ささやかな事例ではありますが、東京のアドバンテージは、年々小さくなってきているなというのが、率直な感想です。
更に、今のご時世、地方に居を構えつつ、東京からのオファーをこなす方も珍しくないですし……とまあ、相談者とて重々ご承知のことを並べ立てても、“釈迦に説法”。
この辺にしておきます。

少し気になるのは、“家族を安心させるために”という物言いでしょうか。
「もう一度大きな現場で働きたい」というご自身の希望とご家族を、天秤にかけておられる(ように見えてしまう)点です。

いざお引越しとなれば、お子さんや奥様の環境も当然変わる。
“多少ブラックな職場”でも許容するという相談者も、今よりストレスを抱え込むことになるでしょう。
結果、ご家庭内でちょっとした揉めごと、心配事が増えるかもしれません。
そういった諸々が、相談者の心身を侵食し、やがては仕事の出来不出来を左右しないとも限らない。
いや、実はこれ筆者の話。
長女が楽しく学校生活を送れているか、次女の体調、妻の機嫌の良し悪し……情けない話ですが、“家族が安心している状態”でなければ落ち着かず、仕事でのパフォーマンスを最大化出来ない性質なのです。
つまり、言いたいのは「天秤にかけるな!」ではなく、2つは同じ皿の上……天秤にかけること自体不可能なのだということ。
そうでなくとも、“○○のために”という発想はリスクを伴う。
“ために”と“せいで”は常に表裏一体。
うまくいっているときは“ために”でも、落ち目になった途端“せいで”となるのが人間というものでしょう。
もし、本気で“家族のため”とお考えなら、「俺の才能はもっと予算が潤沢な、ビッグプロジェクトでこそ活きる!」、「その方が稼ぎも増え、妻子をより幸せに出来る!」という確信の元行動に移すべきで、「東京」だの「地方」だのと、漠然とした憧れのような感情で道を選択するのは危ういことだと思うのです。
ご武運を。

山田ルイ53世

山田ルイ53世

お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当

本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)、近著に『パパが貴族』(双葉社)。
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