くらし

【山田ルイ53世のお悩み相談】母が否定的なことばかり言います。

お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当で、作家としても活動中の山田ルイ53世さんが読者のお悩みに答える連載。今回は否定的なことばかり言うお母さんにうんざりしている女性からの相談です。
  • 撮影・中島慶子

<お悩み>

こんにちは。山田さんの文章にいつも励まされています。
母の言動について相談させてください。
人気急上昇の芸人には「どこが面白いのかわからない」
テレビでよく取り上げられる人気施設には「自慢じゃないけど一回も行ったことがない」
売り出し中の若手俳優には「下手だしどこがカッコいいのかわからない」
というのをしょっちゅう聞かされます。
人気急上昇の芸人を母がよく知らないだけで急に褒め始めることもありますし、
人気施設には行きたい人が行けばいいから本当に自慢ではない、
売り出し中の若手俳優のメインターゲットは母世代ではない、
と聞くたびに思っています。
好きじゃない自慢、知らない自慢、興味ない自慢をどうしてすぐにするのでしょうか?
そんな発言してる割にテレビなどメディアに振り回されすぎじゃないでしょうか?
適当に聞き流してはいますが、自分にもその考えが移りそうで嫌になってきたので近々一人暮らしするつもりです。

(ナポリ/女性/27歳会社員です。一人暮らしをしたい実家暮らしです。)

山田ルイ53世さんの回答

ナポリさんが27歳ということは、母上の年齢は、50~60歳といったところでしょうか。
「どこが面白いのかわからない」、「自慢じゃないけど1回も行ったことがない」等々、憎まれ口を叩くくらい、お若く元気。

元来、「ただ否定する」というのは(ただ評価する・褒めるというのも結局のところ、同じことですが……)、人が優越感を得るのに、最もお手軽な方法と言えます。
筆者にも似たような経験があります。
以前、地方営業のお笑いステージで漫才を披露した後、楽屋でSNSを眺めていたら、“さっき、ショッピングモールに髭男爵いた。わたしはスルーしたけど!”というつぶやきを発見。
謎のアピールに、ゲンナリしたことがあります。
……いや、ちょっと違うかもしれませんが、とにかく自分は何もしなくても良い。
他人を叩き、腐すことで、相対的に自分の価値を高めることが(一見)叶うわけですから、実にラクチン。
気分も良いのでしょう。
その対象が、皆が「良い!」と言うものなら尚更。
「あたしはそうは思わない!」と口にするだけで、変わり者で、特別な価値観の持ち主だと気取ることが出来るわけですから、癖になるのも仕方がない。

とは言え、SNS等を覗けば、そういう方々は山ほどいらっしゃいますので、ある意味多数派……非常にベタで、ありきたりとも言える。
皮肉なものです。

母上の場合、娘、つまり、相談者に一目置かれたいような欲求があるのかもしれません。
だとすれば、実にキュート。
あまり目くじらを立てるのも気が引けます。

この際、ちょっとしたお仕置きとして、母上が何かを否定する度、
「ほんとそうだよねー、私もそう思う!」
「だよねー、皆言ってるもんねー!」
「○○(著名人、あるいは、近所の顔見知りの人等)さんもそんなこと言ってたよ!」
とむしろ“肯定”、乗っかってあげるというのはどうでしょう。
少々意地悪ですが、筆者の周りの“母上的言動をする方々”に試すと、かなりの確率で、“シュン”となります。
「それは、皆と同じ考え、ベタな指摘ですよ?」
と暗に、少数派でも、特別トリッキーな発想でもないのだと、相対的価値を下げてあげる。
きっと、母上も、
(……あれ?)
と複雑な表情をされるでしょう。
……効果が無くても責任は取りかねますが。

いずれにせよ、家族・親子だからと言って、一心同体、なかよしこよしでなければならないという法はありません。
実際、親や兄弟と馬が合わない、なんて方も少なくない。
無理をして付き合い煮詰まるよりも、母上がお元気なうちに一度離れて暮らしてみるのも悪くないと思います。

山田ルイ53世

山田ルイ53世

お笑いコンビ、髭男爵のツッコミ担当

本名、山田順三。幼い頃から秀才で兵庫県の名門中学に進学するも、引きこもりとなり、大検合格を経て愛媛大学に進学。その後中退し、芸人へ。著書に『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)、『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)、近著に『パパが貴族』(双葉社)。
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