くらし

東京という都市のユニークさを再発見!国立新美術館『MANGA都市TOKYO』

  • 文・知井恵理

420年前、日本の中心となって以来、つねに変化し続けてきた東京。その特徴や変遷を、日本が世界に誇るカルチャー、漫画・アニメ・ゲーム・特撮でひもとく本展。2018年にフランス・パリで開催され、約3万人超を動員した『MANGA⇔TOKYO』展の凱旋企画でもある。

93タイトル、総出品数500点以上と、ほぼ同規模・同内容の展示物が一堂に会する会場内で真っ先に目を引くのは、1000分の1スケールの東京都市の模型。

「北は池袋、西は新宿副都心、南は羽田空港、東は東京スカイツリーまでを精巧に再現しました。壁のスクリーンに作品が映ると、縁のあるエリアの模型に照明が点き、作品と都市との関係性が直感的にわかる仕組みになっています」(国立新美術館主任研究員・真住貴子さん)

この模型を囲むように設置された展示スペースは、3つのセクションから構成。「セクション1:破壊と復興の反復」では、『AKIRA』や『ゴジラ』など、東京の破壊を描いた作品を紹介。「セクション2:東京の日常」では、江戸時代から現代まで、各時代の東京の姿を描いた作品を展示。大正デモクラシー下でたくましく生きる女性を描いた『はいからさんが通る』など、各作品を通して人々が生活する場としての東京をリアルに感じることができる。

「各時代で女性の描かれ方やファッションが異なるので、作品を見比べてみるのも面白いですよ」

「セクション3:キャラクターvs.都市」では、コンビニや電車をジャックした漫画、アニメを紹介。現実空間に入り込んだ展示は、作品の世界観を体感でき理屈抜きに楽しめる。

「震災や空襲などで破壊されるたびに復興を遂げ、現実と非現実が交わった空間にもなる。そうしたフレキシブルな都市だからこそ、東京を舞台にした作品がこれだけ多く生まれたのだと思います。さまざまなエリア・時代の東京がタイムカプセルのように残っている作品たちで、この街の魅力を再発見してみてください」

大和和紀 『はいからさんが通る』

大正時代の東京を舞台にした波瀾万丈な恋物語。「女性の権利が当たり前でなかった時代に、自分らしく生き抜く主人公が印象的です」(C)大和和紀/講談社

滝田ゆう 『寺島町奇譚』

墨田区東向島で育った作者の自伝的物語。太平洋戦争当時の遊郭界隈に暮らす人々の日常をスタンドバーの息子・キヨシの目線で綴る。(C)滝田ゆう

羽海野チカ『3月のライオン』

両親と妹を交通事故で亡くした孤独な少年が、周囲に支えられながら成長していく。佃・月島エリアの下町らしい様子が描かれている。(C)羽海野チカ/白泉社

わたせせいぞう『東京エデン』

東京を舞台に、大人の恋模様を繊細に描く。「レインボーブリッジなど1990年代末の東京名所や当時のファッションも見どころです」(C)わたせせいぞう

杉浦日向子 『百日紅』

葛飾北斎と彼の娘で絵師でもある応為(お栄)を中心に、人情話や怪談などを綴る。木造の日本橋など風情あふれる江戸の風景も必見。(C)杉浦日向子

上條淳士 『To-y』

飛び抜けた容姿と音楽性を持つ少年トーイが、芸能界へ足を踏み入れる。「’80年代半ばの渋谷の街並みが魅力的に描かれています」(C)上條淳士/小学館/小学館クリエイティブ

国立新美術館
『MANGA都市TOKYO』ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020
〜11月3日(祝)

(東京都港区六本木7-22-2)TEL.03-5777-8600 営業時間:10時〜18時 火曜休(11月3日は開館) 料金・一般1,600円*入場は日時指定観覧券、もしくは日時指定券(無料)が必要。

『クロワッサン』1030号より

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