くらし

トルコでチューリップが愛される理由。国立新美術館 企画展示室2E 『トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美』

  • 文・知井恵理
《スルタン・スレイマン1世のものとされる儀式用カフタン》16世紀中期 トプカプ宮殿博物館蔵。毛足の長い葉付きのチューリップが織り出されたイタリア製ベルベットのカフタン。

「豪華壮麗なイメージが強かったこれまでのトルコ展とは違い、今回はオスマン帝国が愛でてきた美意識や文化・芸術観に焦点をあてました」

そう語るのは、本展の全体監修を手がけたイスラム美術史家のヤマンラール水野美奈子さん。約170点の作品のほとんどが初来日となる本展では、トプカプ宮殿博物館が所蔵する16〜19世紀の美術工芸品を、3つのテーマに沿って紹介している。

第1部のテーマは「オスマン帝国の栄華」。ふんだんにあしらわれた宝石、精緻な刺繡や細工の数々からは、当時の国の隆盛ぶりと同時にオスマン帝国のルーツや彼らに根付いていた文化を読み取ることができる。

《射手用指輪》16-17世紀 トプカプ宮殿博物館蔵。狩猟時などに矢のすべりを良くするために親指にはめて使用した指輪。全面にダイヤモンドとルビーが見られる。

「オスマン帝国のルーツはトルコ系の遊牧民族、カユ族です。たとえば、権力者が着用していた衣装、カフタンのなかには、カユ族のシンボルである三日月や中国の健康長寿の象徴である霊芝が織り出されているものもあります。また、トプカプ宮殿内の割礼の儀式を行う部屋のブルーのタイルには、中国で吉祥を意味するキリンが描かれています。オスマン帝国はイスラム王朝ですが、トルコ民族が継承してきたアジア圏の文化も、宮殿の生活に色濃く残っていたことが随所からうかがえるのです」

《スルタン・メフメト4世の宝飾短剣》1664年頃 トプカプ宮殿博物館蔵。柄にはエメラルドを使用。鞘には金や七宝が施され、随所にチューリップを表すデザインも見られる。

第2部は「象徴としてのチューリップ」というテーマで、チューリップをモチーフとした刀剣や衣装、書籍の装飾などの美術・工芸品を展示。

「チューリップは、アラビア文字で『LALE(ラーレ)』と綴ります。文字を組み替えれば『アッラー』、反対から読むと『ヒラール』と三日月を意味する言葉になる。姿形の美しさも相まって、チューリップはオスマン帝国で非常に愛されました。本展は、こうしたトプカプ宮殿の学術研究員によるチューリップ研究の成果を見られる貴重な機会でもあります」

第3部のテーマは「日本とトルコの友好」で、両国の交流を示す品々や盛んに民間外交を行った山田寅次郎についても紹介されている。トルコ文化の厚みへの畏敬と、同じアジア文化圏への親しみが同時に湧き上がる、意義深い展覧会だ。

《玉座用吊るし飾り》18世紀後半 トプカプ宮殿博物館蔵。支配者(スルタン)が過ごす室内や玉座を彩る飾り。金やエメラルド、ダイヤモンド、真珠を贅沢に使用。

 『トルコ至宝展 チューリップの宮殿 トプカプの美』
国立新美術館 〜5月20日(月)
東京都港区六本木7-22-2 TEL.03-5777-8600 10時〜18時(金・土曜日と4月26日〜5月5日は〜20時、入場は閉館30分前まで) 休館日:火曜(4月30日は開館) 料金・一般1,600円

『クロワッサン』995号より

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