無為なセックスをしたり、男にふりまわされたりするのは、ひとり暮らしの女子大生が浴びる洗礼のようなもの。同年代の男はガキっぽすぎてうんざり、しかし年上男の前では自分らしくふるまえなくなる描写が実にリアルで、この年齢を通過した女性なら身につまされるのでは? モラトリアムの日々にはまる沼化した恋愛とそこからの生還は、現代に至るまで、女性の青春の一大テーマです。
デビュー直後のキュートな奥田瑛二も、学生運動くずれ特有のカリスマティックなフェロモンをまき散らす森本レオもそれぞれにはまり役ながら、本作はなんといっても’70年代もっとも輝いた女優、桃井かおりこそがすべて! そこに居るだけで物語が生まれる、この時代の桃井かおりの詩的なルックス、アンニュイな存在感は絶品です。
彼女はこの後も息の長いキャリアを築き、ハリウッドに進出、さらには監督業もこなす超人に進化していきます。本人に強靭な自我を感じさせる女優は日本ではレアですが、そういう個性の持ち主だからこそ本作のラストシーンで、彼女はもう一人で大丈夫なんだと清々しく思える。桃井かおりでしか成立しない、’70年代の青春物語なのでした。