平野 イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは著書『ホモ・デウス』で、分業化体制になった近代以降、国は産業振興のために教育の機会均等を徹底して、一定のリテラシーを備えた人員を供給したほうがいいと気づいて教育がすごく行き届いた、と。でも今後、AIが社会の機能を代替していくと、格差が開いて放置されるのではないかと、この本は警鐘を鳴らしていて。僕もそれを懸念しています。
パックン おっしゃるとおり、階層が凝り固まる瞬間を我々は見ているのかもしれません。なぜならAIやロボットとか、人間よりはるかに能力があるものを持っている人だけが、これから生産力を持つから。ごく一部が永遠に権力と経済を握って、民主主義が崩壊する。この先、世界にAI革命、温暖化といった地球規模の問題に向き合うのに必要なのは、何より教育と哲学じゃないかと思います。
平野 世代間で階級が固定され、お金持ちの子どもだけが、いい教育も受けられるようになってきています。特に東京では、少子化で受験産業の競争が激化する中、親も子どもの将来を心配して、お受験が過熱していて。そんなに機械的に問題集をやらせて、それが生きていく力に結びつくのか疑問です。
パックン 詰め込み式ですよね。教育改革も唱えだして10年以上経ちますが、受験制度も変わらないし、アクティブラーニングも導入されない。結局はデータをインプットして、試験で出力できるかどうか。僕は、計算機とウィキペディアで100点が取れる受験制度はもういらないと思います。あなたは何を考え、それをどう処理し、いかに人に伝えるかという、一人ひとりの独自の発想力、コミュニケーション能力を測るようなシステムに変えないと。