きっかけは知り合いに誘われた金継ぎ教室。そこでは合成漆を使う簡易な方法だったため、接着部分のシンナー臭が強いのに驚いてしまったという。初めての体験はそんなふうだったけれど、自分で器を修繕するのは「いいものだな」という感触は残った。そこで、今度はにおいがなく、熱にも強い本漆を使った金継ぎに挑戦しようと、東急ハンズでキットを購入したのが始まり。
本漆を使った継ぎは、1回の乾燥に1週間、1つの修繕に2、3カ月かかることもざら。それでも「家でやるからこそ気長にできる」とおおらかに構え、3つ4つたまったら手を付けることをルールに続けてきた。
「欠けたところがそのままだと、使うたびに残念な気持ちに。それが直してみるとやっぱりいい。金が入ることで生き返ったようになるんです」
家でお茶を飲んだり、料理を盛り付けるとき、自然に手が伸びるのは、直した器のほうなのだそう。
「手をかけた分、使いたくなるんでしょうね。愛着が湧くって、こういうことなのかなと思います」