リビングダイニングの窓から差し込む陽光と、都心とは思えないほどの豊かな緑を望むこの部屋が、インテリアスタイリスト・石井佳苗さんの新居。神奈川の横須賀と逗子に長く暮らし、東京に戻って2軒目の住まいとなる。
「少しの間、世田谷で部屋を借りて暮らしていたんです。でも持ち家だった横須賀と逗子で自由に家に手を加えることを覚えてしまったら、賃貸は落ち着かなくて。この家を買って、去年の11月に引っ越してきました」
3匹の猫と一人の暮らし。物件選びで最優先したのは、猫にも人にも心地よい環境であること。
「ペット可の物件でも、3匹飼える所はなかなかないんです。もう一つ、私が条件にしたのは部屋から緑が見えること。自然豊かな環境に長く暮らしていたので、東京でも緑を感じていたいと思って。でも、東京に住むからには便利な場所でなければ。そうした立地を求めれば、今までより狭い部屋になることは納得の上で探しました」
かくして出合ったのが、川沿いに立つ築50年、52平米のヴィンテージマンションの1階。すでにリノベーション済みだったものを壊し、一から家づくりを始めた。課題のひとつが、南西向きの窓から入る光を家全体にどう回すか。完成した1LDKは、開放的でどこにいても光を感じられる空間。ゆったりとした印象の秘密は天井と廊下、キッチンの3カ所にあるカーブ。廊下の壁にはお気に入りの鏡を飾り、ギャラリーのように楽しんでいる。
「角が多いと、どうしても鋭角の影が落ちて閉塞感が出てしまう。でも、カーブをつけると強い影が消え、部屋全体が柔らかな印象になります」
光と風が回る空間づくりに貢献するのは、玄関や和室の仕切りに使ったオーダーメイドのウッドシャッター。
「スラット(羽)の角度を自在に調整できるのがこのシャッターのいいところ。わずかにスラットを開いておけば、寝室でもある和室にそこから朝日が差し込み、自然に目覚められます。でも大きな隙間はできないので猫のすり抜け防止にも。光と風は通しても、猫は通さないのがいいですね(笑)」