住宅や店舗のデザインを手掛ける井手しのぶさんが「終の棲家のつもりで」70平方メートルほどの平屋を建てたのは3年前。広々とした庭の、木立の間からは海が望める鎌倉の小高い山の上にある家だ。おもに湘南方面で転居を繰り返し、なんとこの家で7軒目。ほぼすべて、自分で設計・デザインをしてきた。
「子育てをしながら忙しく働いていた頃は、事務所兼自宅に。息子が独立して一人暮らしになってからは、念願の海辺に家を建てたこともあります。今回、この家を建てるタイミングで会社を人に譲り、手持ちの不動産も整理して、暮らしをコンパクトにしました」
目指したのは掃除がしやすく、維持もメンテナンスも楽なシンプルな家。LDKと寝室、バスルームのみの1LDKの間取りだ。
「掃除が苦手なの(笑)。でも犬1匹と猫2匹と暮らしているので、とにかく床が汚れるんです。LDKの床をモルタルにしたのは、ほうきでサッと掃けるから。寝室はウエットシートで拭けばOKなフローリングです。平屋で階段もないから、掃除機の持ち運びも苦にならない。掃除は楽になりましたね。あと光熱費が安くなりました。夏は犬のためにエアコンをかけていますが、電気代はさほどかかりません」
冬は室内まで陽射しがたっぷり入るので昼間はほぼ暖房いらず。モルタルの床は、太陽光を蓄熱して温かい。夏は直射日光が入らないので床がひんやり、窓を開ければ風もよく通る。