スープ作家・有賀薫さんの、食が暮らしの中心にある住まい方。
毎日のことだから、食事作りは楽しくシンプルでありたい。スープ作家の有賀薫さんが作った、〈ごはん装置〉。食を変えたら、暮らしも変わりました。
撮影・黒川ひろみ 文・一澤ひらり
「作る」と「食べる」を根本から変える、新しい食のスタイル。
既存のキッチンの枠から飛び出して、もっと自由で楽しい場を作りたくて。
3年前、息子が就職のために家を離れ、夫婦2人暮らしになったスープ作家の有賀薫さん。住まい方と空間のあり方を見直すチャンスと、築20年3LDKの分譲マンションをリノベーションすることに。とりわけキッチンに対しては強い思いがあった。
「夫婦共働きが当たり前の時代になっても、妻は家事の呪縛から逃れられないのが現実です。なぜ自分だけ?と思いながら、キッチンが『お母さんの城』になってしまい、家族を遠ざける原因になってもいる。ここを見直さないと、暮らしも関係性も何も変わらないと思ったんです」
もっと家事をシェアできれば楽になって、コミュニケーションも生まれる。そのためには従来のキッチンの概念を壊すことが必要と考えた。
「キャンプって、みんなでわいわい言いながら料理を作って、食べて、後片づけしますよね。あの楽しい雰囲気をダイニングに持ち込めば、もっと新しい関係性が生まれるんじゃないかって思ったんですよね」
この発想を見事に実現させたのが、上の写真で有賀さんが立っている正方形のテーブル〈ミングル〉だ。
みんなでぐるぐる料理する。家族で家事をシェアする実感。
「簡単に言うと『キッチン機能付きダイニングテーブル』。ここで料理を作って後片づけまで行えます。ミングルは設計士さんが探し当ててくれた言葉で、英語で『混ぜる、一緒になる』などの意味があり、シェアハウス的な生活を指す言葉でもあるそうです。みんなでぐるぐる料理するから、ミングル。語呂のよさ、語感の楽しさもあって名づけました」
これまでのライフスタイルを変えるという、ミングルの全貌とは?