「この本に書いた人たちはみなさん、酔っ払ってやらかしてるんです。立派に見える人でもこれだけ“ひどい”というほうが、世の中の酒呑みは勇気づけられるかなあというのがベースにあって」
と言う栗下直也さん。自らの酔っ払い体験も「語れる範囲で」折り込みつつ、さまざまな分野で活躍した27人の、“泥酔”エピソードをこれでもか!と、一冊にぎっしり詰め込んだ。強烈な話が満載なのだが、中でも栗下さんが共感を覚えたのは、日本を代表する評論家の一人、同時代の小林秀雄と双璧をなすと称される、河上徹太郎なのだとか。
「みなさんの行動の延長線上にいるような、酔っ払い体験をあっけらかんと本人が書いている。トラ箱で目覚めたあと『お礼をしたい』なんて警察官に言ったりしていて、上司にいたらいいなと思います」
トラ箱とは最近は耳にすることもなくなったが、泥酔者を留置するため警察に設けられた保護室のこと。ベロベロになり、朝そこで目覚めた河上徹太郎が警察官に向かい「お礼にみなさんとウイスキーで乾杯したい」と申し出たという。差し入れしたい、ってまだ呑むのか!と突っ込みたくなるが。その2カ月後に、文化功労者に選ばれているというから、すごい。