くらし

タフでかっこいい、成熟を体現する3人の女たち

親子に夫婦、仕事の人間関係、これからの生き方。悩んで壁にぶつかった時は活字の世界へ。思いもよらぬ示唆やヒントにきっと出合える。ジャーナリストの島﨑今日子さんに聞いた。
  • 撮影・黒川ひろみ 文・日高むつみ

ただの一冊とて外れなし!と断言できる、田辺聖子さん。

『楽老抄』幼い頃の思い出や、母と夫との生活、文学仲間のこと、古典への想いなどを縦横無尽に語りつつ年を重ねる妙味を飄々と綴る随筆。「老いることの愉しみを教えてくれる一冊」。580円(集英社)。

昭和3年生まれ。生家の焼失により女学校を諦め、金物問屋に勤めながら文学修業し、35歳で芥川賞を受賞。軽妙な大阪弁にのせて男女の機微や女性の生き方を綴り“お聖さん”と親しまれた。

「“女の子の味方をする”と決めて、昭和の女の人生を書き続けてきた。作品には田辺さんの人生がそのまま詰まっています。“日常って、そんなにたやすいもんやない。それでも腐らんと生きていきましょ”という見事な生き方。人生の辛酸をなめてシビアな現実を知り尽くした人だからこその甘さがあり、読みやすいけれども読後感はしみじみ滋味深い。きっと心に届くものがあると思います」

人生における跳躍力が半端じゃない、ヤマザキマリさん。

『ヴィオラ母さん』漫画『テルマエ・ロマエ』の作者が、母・リョウコについて綴ったエッ セイ漫画。音楽と娘と自身の人生を愛する“規格外”の母から学んだ、ブレない人生の歩き方を知る。1,300円(文藝春秋)。

「この母にしてこの子あり。ヤマザキさんは強烈な鋼のよう。尋常じゃないサバイバル力がある」
 

14歳でヨーロッパに単身旅行して17歳からイタリアで画家修業。シングルマザーになって……という波瀾万丈な人生も、彼女にとっては苦労じゃない。なぜなら母も音楽家になるため家を飛びだし、ヴィオラ奏者として女手ひとつで娘2人を育て上げたから。

「世に言う“いい母親”ではないけれど、自分を信じて何を恨むでもなく生きていく姿勢を教えてくれている。つらさやしんどさを軽々超えるジャンプ力は母譲り。壁に当たっても、上を向いたら違う景色も見えてくると教えてくれます」

私の知らない景色を見せてくれた、田中美津さん。

『この星は、私の星じゃない』著者がこの10年の間に綴ってきた文章や対談、往復書簡を収録。女性としての自分を認めて生きること、東日本大震災や沖縄の基地問題、子どもの虐待死などに向き合う一冊。2,400円(岩波書店)。

1970年「便所からの解放」という一枚のビラを書いて日本にウーマンリブの火を灯した田中美津さん。その生き方を俯瞰する一冊が今年5月に刊行された。タイトルは幼い頃に受けた性的暴力を乗り越えて生き延びるための諦念。

「“どん底の底はない。生きてさえいれば、いつかは笑える”“どんな人の人生も幸福だけではないし不幸だけではない”という言葉に救われます。理不尽な事柄に憤り、自身の考えを主張して、他者を思い、矛盾だらけの自分を愛おしむ。美津さんの生き方に、こんな成熟の仕方もあるのだとぐっときました。いかに成熟していくかは老いの醍醐味ですから」

島﨑今日子(しまざき・きょうこ)さん●ジャーナリスト。ジェンダーをテーマに幅広い分野で執筆活動を行う。『安井かずみがいた時代』(集英社)など、著書多数。

『クロワッサン』1003号より

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