からだ

[専門医に聞く子宮内膜増殖症]人生を左右する出血、早めのコントロールという手も。

  • 撮影・森山祐子 イラストレーション・小迎裕美子、川野郁代 文・越川典子、青山貴子

黄体ホルモンを足すという方法も、知っておきたい。

無排卵により、黄体ホルモンが分泌されないことが問題なんです。黄体ホルモンは子宮の内膜を薄くしたり出血を減らしたりして、がんから子宮を守る成分です。子宮体がんや乳がんはエストロゲン依存性の疾患ですから、黄体ホルモンに制御されずエストロゲンのみの状態が続くときに、悪性疾患に移行するリスクが高まるわけですね」
子宮体がんはタイプ1と2があることは、「不正出血したら、すぐ受診。子宮体がんは治りやすいがんです。」のページでも伝えたが、
「タイプ2は偶発的ですが、多いタイプ1はエストロゲン依存疾患。ですから、無排卵周期症の人に現れる。子宮内膜増殖症は、前がん病変、グレーゾーンとして扱います」

グレーゾーンには4つの分類があって、単純型で異形成がない、単純型で異形成がある、複雑型で異形成がない、複雑型で異形成がある。4つ目は、ほぼ、がんとして扱い、子宮全摘手術となる。
「不正出血して初めて子宮体がんを疑うより、子宮内膜増殖症が現れた時点で黄体ホルモンを足せば、早い段階でがんのリスクを減らすことができます。それが新しい流れになっているんです」

過多月経の治療法。不正出血の治療法は症状や年齢によって選択肢も変わる。それぞれのメリット、デメリットを考慮して選びたい。作成:太田郁子

ただ、子宮頸がんや乳がんに比べて、子宮内膜増殖症には圧倒的に見つけにくい不利な条件がある。
「なぜかというと、確定診断が難しいんです。100%診断がついてからでは遅いこともあるので、症状からみて増殖症の疑いがある場合、なるべく早く治療を開始したい。治療とは、分泌されない黄体ホルモンの投与です。では、黄体ホルモンがどこに必要かというと、がん化する子宮内です。月経量が多い場合、子宮内に入れ、内膜だけに作用するミレーナ(ページ下)も有効です」

子宮体がんは、性格の良いがん。ブロックする治療も確立されているし、手術法も進歩している。出血した段階で早期発見すれば治癒率は高い。でもよく考えて、と太田さん。
「無排卵周期の人は、1カ月くらい続く出血にはなれているんですね。不定期なことにも。『不正出血したら受診して』と言っても、無排卵周期の人は、自分の出血を不正出血と思わない。気づきにくい。それで発見が遅れることが問題なんです。
過多月経の人で鉄剤を処方されているうちの60%が比較的若い世代の子宮内膜症ですが、40代で過多月経ぎみだけれど、自分の体質だからと諦めている人も少なくありません。聞けば、皆さん、鉄剤は服用しています。ここが不思議で仕方がないのです。鉄剤ではなく、なぜ多すぎる月経量をコントロールしないのでしょう。40歳以下であれば、低用量ピルを。血栓のリスクが高まる40代以降はミレーナや経口黄体ホルモン剤が効果を出してくれます」

ミレーナ。子宮内に入れると、最長5年間、黄体ホルモンが放出される。2014年に過多月経、月経困難症への保険適用が加わった。
40歳以下なら、低用量ピルを使用することで、月経量を減らしたり、子宮内膜のコントロールができる。
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