「あれ、おかしいな」は認知症のサインです。 記憶障害や判断力の低下など、日常の小さな違和感を見逃さない
イラストレーション・竹井晴日 文・黒澤 彩
これって認知症? それとも、ただのもの忘れ? ちょっとした変化に気づいても、なかなか判断がつきにくい。
多くの認知症患者を診察してきた医師の霜田里絵さんによれば、日付がわからない、人がわからないなど認知症特有の変化が見られる場合は、すでに進行していると考えられるという。
「ただ、もの忘れが増えたり、同じ話を何度もするといったことは、普通の老化現象として誰にでもあること。認知症と断定できない、いわゆる“グレー”な状態という人も多いとは思いますが、気になるなら医療機関の受診を。結果、認知症と診断されなくても様子だけは見ていきましょう」
よく挙げられる例としては、食べたものが何だったかを忘れてしまうのは普通のもの忘れで、食べたこと自体を忘れてしまうのが認知症、という違い。会話の中でいろいろと質問を投げかけてみると、気づくきっかけになりやすいという。
「イエスかノーで答えられるようなことではなくて、いつもの会話とは違う、ちょっと変化球の質問をしてみましょう。『このあいだの〇〇のニュースってどう思う?』『最近、どこか新しいお店に行った?』などと聞いてみると、記憶力のチェックになります」
とくに親が遠方に住んでいる場合は、家の中の様子を頻繁に見ることができず、日常の変化に気づきにくい。
「たしかに、本人の言動だけではなくて家の様子もヒントになります。もし親御さんがスマホを持っていたら、カメラをオンにしてビデオ通話で話すのはどうでしょうか。嫌がられなければ、冷蔵庫内や部屋全体を映して見せてもらうといいですね」
五感が鈍い
視力が悪くなる、耳が遠くなることは単なる老化の一端ではあるものの、認知症に伴う変化としてさまざまな感覚が鈍くなることはあり得る。「とくに嗅覚の変化は、とても重要な認知症の兆候の一つです。しかも本人が気づきにくいものなので、身近な人が異変に気づいてあげることが大切です」(霜田さん)
におい、香りを感じられない
いい香りにも嫌なにおいにも気づきにくくなる。その場にいるほかの人が感じているのに、本人だけがピンときていないなら注意。
味付けがやけに濃いような?
嗅覚と味覚の変化によって味の違いがわかりにくくなり、今までより極端に濃い味を好んだり、反対に全てが薄味になったりする。
目の前にあるのに探している
視界に入っていても脳が視覚からの情報を認知しづらくなり、すぐ近くにあるものの存在に気づけず、探し続けたりする。
覚えていられない
記憶障害は認知症の症状の一つではあるが、単なる老化現象としてのもの忘れとの線引きは難しい。同じ“うっかり”を何度も繰り返すようになると認知症の疑いが。「昔のいい思い出は大脳にしっかり定着していて忘れないのに対し、新しいことは覚えられないというのが認知症の特徴です」
見ているテレビの内容が曖昧
ちゃんとテレビを見ているようでいて、内容を把握できておらず、見ている番組について何か聞かれても答えられない。
収納したことを覚えていない
大切なものを自分でしまったのに、しまったことを自覚しておらず、見つけられない。進行すると「盗まれた」などと言うことも。
何度言っても「初耳!」
何度も伝えても「初めて聞いた」「聞いていない」と言ったり、本人が何度も言ったことを「言っていない」と否定したりする。
冷蔵庫に同じものがたくさん
買ったことを忘れて同じものを何度も買ってきて冷蔵庫にしまう。不要な買い物をするだけではなく、同じものというのがポイント。
食事をしたことを忘れる
典型的な例。数時間前に食べたのに「食べていない」と言い出す。一方で、食べた内容を忘れる程度なら認知症とは言い切れない。
しょっちゅうスマホを探す
日常的に持ち歩いているようなスマホや鍵などをいつも探し回っている。どこかにポンと置いて、その記憶がなくなっている。
毎日飲む薬を飲み忘れる
今まではちゃんと飲んでいたのができなくなる。さらに病院の受診自体を忘れて、家族が気づいたときには数カ月経っていることも。
待ち合わせができない
友人や家族との待ち合わせを忘れてしまう。記憶障害の症状だが、社会的なトラブルにもつながるので、見逃せないサインの一つ。
決められない考えられない
判断力や問題解決能力が低下するのも認知症による脳の変化が原因。「海馬と前頭葉の両方に影響が出ることで、新しい情報を取り込んで定着させることができず、さまざまな物事を統合して考えることが苦手になります」。バランス感覚や柔軟性を欠いて、凝り固まったようになっていたら認知症の影響かもしれない。
断れずに買ってしまう
強引な勧誘や販売手法に対して断れず、言われるがままに不要なものを買ってしまう。判断力の低下によるもの。
簡単で偏った意見ばかりに
例えば職場の悩みについて意見を求めても、「上司に言いなさい」などと単純で偏ったことしか提案できなくなる。
『クロワッサン』1174号より
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