「泥大島紬の着物は結婚10周年に夫がプレゼントしてくれました」、芸人・大島美幸さんの着物の時間。
撮影・青木和義 ヘア&メイク・長網志津子 着付け・紫藤尚世 文・大澤はつ江
口紅、帯揚げ、帯締め、バッグの玉飾り。 渋い泥大島に赤が映えていいでしょう。
赤やピンク、緑、黄など鮮やかな色合いの個性的なウエアの印象が強い大島美幸さん。バラエティー番組ではパワー全開。見ている人を元気にしてくれる。
今回は、そんな「森三中・大島美幸」ではなく、しっとりとした着物姿での登場だ。
「緊張! 久々に着物を着ました。この着物は結婚10周年(2002年に放送作家・鈴木おさむさんと結婚)を記念してパーティーを開くことになり、お祝いにと着物、帯、小物など、一式を夫がプレゼントしてくれました」
着物は泥大島紬で、黒無地、麻の葉、縞、霰の4種類の生地をパッチワークのように繋げた手の込んだもの。着物デザイナー紫藤尚世(しとうひさよ)さんの作品で帯、帯締めなどの小物類もすべて紫藤さんがコーディネイトした。
「夫と紫藤さんがバーで知り合い、意気投合。そのご縁で結婚記念パーティーの着物をお願いすることに。大島紬にしたのは、『大島美幸なんだから、大島しかないでしょう』という夫の一言で決まったそうで、ちょっとよくわかりませんが、できあがった着物は素晴らしくて、一目で気に入りました。これと同じ生地の組み合わせで夫の着物も仕立てましたから、いわば“お揃い”というわけです」
紫藤さんによると、「麻の葉」文様は、成長の早い生命力と、神道で場を清める力を持つとされている麻を意匠化したもので、今後の健康と厄除けを込めて、メインに使った。
洋服が好きで、自ら作ることもある大島さんだが、着物の思い出などを聞くと、
「実は2002年は入籍だけで、結婚式は挙げていなくて。7年目に伊勢神宮に行って、白無垢を着ました。挙式後、記念写真を撮っていると、観光中の海外の方たちから“オオッ!”と声があがり……。そんな経験がなかったのでビックリ。まさに、日本代表になった気分でした。その時に着物のオーラというか、威力をまざまざと感じましたね」
祖父の話もしてくれた。
「着物って祖母とか母親が選ぶことが多いですよね。でもなぜか、我が家では担当が祖父なんです。七五三に祖父が選び誂えてくれたのは、赤い花柄の着物でした。
成人式の着物は祖父と呉服店に行き選んだのですが、『どれでも好きなものを選んでいいよ』と言われ、赤地に大きな花が描かれ、そのところどころを金糸で刺繡した豪華な振袖が気に入りました。金額も見ずに、これがいいな、と言ったら『いいよ、いいよ、それにしなさい』と。この振袖は友人の結婚式などで大活躍しましたね」
自分で着られるようになりたい。目標はカッコいい着物姿です。
30代になり、大島さんは友人たちとある会を開催した。
「“三十路会(みそじかい)”。特にテーマはありません。友人6人が着物で集まって、近況報告を兼ねて食事をしながらワイワイおしゃべりをして、写真を撮って楽しむ会です。
さすがに振袖では気恥ずかしいので、レンタル着物にしました。淡いピンク色の花柄の訪問着で若奥様風に。40代でも集まりたいと話しているのですが、なかなか全員のスケジュールが合わず、いまだに開催できていないのが残念なんです」
できれば50代も行い、60歳の“還暦会”をするのが夢だと。
「その時のためにも、着付けを自分でできるようになりたい。浴衣はバラエティー番組の温泉ルポなどで着ることが多いので、自分で着られるのですが。まあ時々、途中ではだけることもありますけれど(笑)。
着物をカッコよく着こなしたいです。着物は背筋がすっと伸びて気持ちがきりっと引き締まるところが好きです。あと、行動が丁寧になる。立ち居振る舞いがきれいになるような気がします。ぞんざいに物を取るのではなく、大切に扱うようになる。心に余裕を持って着物を楽しめるようになりたいです」
『クロワッサン』1105号より