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新しい胆汁酸が増えるメリットは、細胞レベルのアンチエイジングです。

  • 文・韮澤恵理

細胞が元気になれば、若さも健康もキープ。

胆汁酸が腸から吸収されると血液に乗って運ばれ、脂肪細胞に指令を出して、余分なエネルギーをどんどん燃やすというのが胆汁酸ダイエットの仕組みでした。⇒詳細はこちらから

胆汁酸の研究を続ける渡辺光博さんはその理由をこう語ります。

「なぜ胆汁酸から指令を受けると、代謝が上がるのか、そのカギは、ミトコンドリアにあります」

ミトコンドリアとは、ほとんどすべての細胞の中にある、エネルギーを作る小さな組織です。

「褐色脂肪細胞や、ベージュ脂肪細胞には、他の細胞に比べて数十倍という大量のミトコンドリアが存在します。そのため、胆汁酸によってスイッチが入ると、エネルギーの消費量が格段に上がることが、ダイエットにつながります」

いいことは、それだけではなく、全身の健康維持に役立つことなのだそう。

「胆汁酸はミトコンドリアの働きをよくし、全身の細胞の若さを保ち、元気を保ちます」

渡辺さんが追求しているのは実はここ。年齢によって細胞が入れ替わる周期は遅くなりますが、ミトコンドリアの働きをよくすると、テンポよく新しい細胞に入れ替わるようになり、肌や髪だけでなく、骨、筋肉、血液、脳なども衰えにくくなるそうです。

「いってみれば究極のアンチエイジング。健康寿命を伸ばし、若さを保つためにも、古い胆汁酸を捨て、新しい胆汁酸を増やすことが効果的というわけです」

その具体的な仕組みと効果を渡辺さんに教えてもらいました。

1.細胞が若返る

細胞は日々新陳代謝して生まれ変わっています。肌の再生サイクルが正常なら28日というのはよく知られていますが、組織によって再生のサイクルは違い、胃腸の内壁はなんと5日ほど、赤血球は120日、骨は2~5カ月で入れ替わります。

細胞が生まれ変わるためには、まず古い細胞が死ぬ必要があります。すると代わりの新しい細胞が作られ、入れ替わっていくわけです。成長したり、健康を保つために正常なサイクルで細胞が死ぬ(アポトーシス)ことが重要です。ここに関わるのがミトコンドリアで、指令を出すのが胆汁酸です。

アポトーシスが正常なら細胞は常に若返っていきます。肌や髪がきちんと新陳代謝してみずみずしく保たれることはもちろん、内臓や血管、血液なども健康に保たれ、活発に働きます。脳細胞の新陳代謝もよくなるので、脳の若さを保つ働きもあるのではないかと研究が進んでいます。

•肌や髪がきれいになる
•健康診断の検査値が改善する

2.代謝力が上がる

代謝という言葉の意味を知っていますか? 一言でいうと、体の中で起こる化学変化のことで、酸素の力で栄養素をエネルギーに変えたり、一度分解されてアミノ酸になったたんぱく質を元に戻して、筋肉や骨を作ったりすることすべてが代謝です。

一般的には、栄養素を燃やしてエネルギーに変えることを代謝と呼んでいて、体を動かすことでエネルギーを消費する「活動代謝」、心臓を動かしたり、呼吸をしたり、体温を保ったりする「基礎代謝」に分けられます。

基礎代謝が上がると、1日を通してたくさんのエネルギーを使えるので、短時間の運動より消費エネルギーは効率よく増やせます。

代謝がよくなるメリットはダイエットだけではありません。栄養素を効率よく熱に変えるので、体温が上がり、血管が拡張して血流がよくなる、不要なものをどんどん排出するので毒素を溜め込まないというのもいいところです。

•冷えが改善し、血流がよくなる
•有害なものを排出できる

3.免疫力が上がる

免疫力という言葉を耳にしますが、免疫は外敵に対する防御反応のこと。菌やウイルスが体に侵入すると、白血球などが攻撃し、外敵の活動を抑える仕組みです。

胆汁酸で全身の細胞が活性化すれば、白血球や、それを生み出す腸にある免疫器官も強くなり、異物に対する攻撃力が上がります。

皮膚や粘膜から外敵が侵入するのを防ぐのも免疫です。皮膚のターンオーバーが正常で、みずみずしさを保っていると、細菌やウイルスが侵入しにくくなります。

唾液や涙、胃粘液など、すべての粘液がきちんと分泌されれば、異物の侵入を妨げます。

古い細胞が変異して起こるのががんですが、これも体内で生まれた異物。通常は免疫や、1でも書いたアポトーシスによって、がん細胞を駆逐できているのですが、勢力に負けてがん細胞がそのまま増え続けると問題です。そのためにも、細胞を入れ替える免疫の力を上げることが大切なのです。

•腸の免疫器官が健康になる
•菌やウイルスの侵入を抑える

杜仲茶農家さんに聞いたお手本にしたい食事。

広島県・因島で30年以上杜仲茶を栽培している農家の石田勝好さんと、妻の伸子さんに、杜仲茶のある暮らしについて聞きました。

「毎日二人で5Lは飲みます。お茶だけじゃないの。味噌汁も肉じゃがも、みんな杜仲茶をだしに使って作ります。ご飯も煮出した杜仲茶で炊いているんです」

天気のいい日は庭先でお昼を食べることもあるという二人。上の写真を見てください。食事の途中なのに、グラスの杜仲茶はすでに空っぽ。渡辺さんの提唱する「杜仲茶は食前、食事中、食後に飲むと最も効果的」という習慣が自然に生活に溶け込んでいます。

特に健康のためと意識はしてないそうですが、背筋がすっと伸びてハリのある肌で本当に若々しい。

「しっかり食べてもお腹が出ないのは、杜仲茶のおかげ。ありがたいですよ」と語ります。

渡辺光博

お話を伺ったのは

渡辺光博 さん (わたなべ・みつひろ)

慶應義塾大学 政策・メディア研究科教授 医学部、環境情報学部教授 ヘルスサイエンスラボ代表

東北大学遺伝子実験施設 博士前期課程修了後、フランス国立ルイ・パスツール大学分子生物学科博士課程卒業。2006年イギリスの科学誌『ネイチャー』に「胆汁酸の調整で肥満と糖尿病が改善」を発表。テレビや講演などで広く活躍。
※プロフィールは雑誌掲載時の情報です。

『Dr.クロワッサン おなかが凹む胆汁酸ダイエット。』(2021年4月13日発売)より。

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