背骨を構成している骨を見るとお腹側にある円柱の形をした椎体、背中側にある穴の空いた突起状の椎弓(ついきゅう)でできています。背骨が積み木のように縦に連なることで椎弓の穴が一本のトンネルのようになったものが、脊柱管というスペース。
その脊柱管内部が狭くなり、神経を圧迫する病態が脊柱管狭窄(きょうさく)症。
「とくに腰の部分で脊柱管が狭くなっているのが腰部脊柱管狭窄症で、女性の場合は60歳以降に発症しやすいと言われています」
加齢によって椎間板や脊柱管を構成する骨が変形して脊柱管の内部に出っ張る、または脊柱管の中の靭帯(じんたい)が分厚くなるなどして、脊柱管が狭くなった状態。
脊柱管の中には脳からの指令を全身に伝える脊髄、馬尾(ばび)、神経根という神経が通っています。脊柱管が狭くなるとこの神経が圧迫されて、さまざまな不具合が生じるというわけです。
「典型的な症状としては、歩き始めてしばらくすると下半身が痛んだりしびれたりして歩けなくなり、座って休むとまた歩き出せるというものです。これは腰椎変性すべり症にも見られる症状で、“間欠性跛行(かんけつせいはこう)”と呼ばれています」
散歩に出かけたときに何度も休む、買い物に出ても目的地まで続けて歩くことができない、団体旅行などでまわりの人について行けない、長く立っているとふくらはぎが痛む、などなど。60代以降になってこんな兆候が出てきたら、脊柱管狭窄症の可能性があります。
間欠性跛行の原因としては脊柱管狭窄症のほかに、脚の血管が閉塞する動脈硬化症によるものがあります。歩くと脚が痛くなり、少し休むとまた歩けるようになるという症状は同じでも、休むときの姿勢に違いがあると言います。
「脊柱管狭窄症の場合、腰を前に倒す猫背姿勢で脊柱管が広がります。ですから、歩いている途中で痛みやしびれが生じたときは座ってうなだれたような姿勢をとると楽になります。これに対して血管性の場合は、ただ歩くのをやめれば痛みやしびれがなくなります。休んでいるときの姿勢で前かがみになるという場合は、脊柱管狭窄症の可能性が高いと言えるでしょう」