からだ

オイル、クリーム、乳液…。秋の肌は“油分”で立て直す。

エイジングが進んだ大人の肌をケアするとき、必要なのが〝油分〟。ベタつくと敬遠されがちな油分の大切さ、見直してみませんか。
  • 撮影・久々江 満 イラストレーション・津村仁美 構成と文・入江信子

大人の肌には油分が不可欠です!

「潤いを与える」というと、「化粧水をたっぷりつけておけばいい」と思う人は少なくない。

「でも、単に水分を与えても、すぐ蒸発してしまいます。本当の保湿とは、水分と油分をバランスよく与えること」と岡部美代治さん。つまり真に肌を潤わせるには、水分を補う化粧水だけでなく、クリーム、乳液、美容オイルなどの、油分を補うケアも必須だという。

肌の最上層にある角層は、ほこり、花粉、細菌といった異物から肌を守るとともに、肌の内側の潤いを蒸発させずに守る、バリアの役割を果たしている。

「ところが年齢を重ねるにつれて、バリア機能は弱まって、肌は潤いを保ちづらくなってきます」

そこで必要なのが油分。

「油分をチャージすれば、肌の上で蓋になって中からの水分蒸発が抑えられるうえ、時間が経つにつれて油分が角層に浸透。バリア機能が強化されて、潤いキープ力がアップします。また、バリア機能が高まれば、炎症が起こりにくく、細胞の代謝もスムーズになって、老化ダメージも少なくなるのです」 さらに油分にはツヤを与える、しなやかにするといった働きも。

「油分を正しく理解して、正しく補うことで、エイジングは抑えられます。年齢を重ねるほど、〝油断〟は禁物と思ってください」

〈 油だからできること 〉

潤いを逃さない。

角層内には細胞が整然と並び、その間を細胞間脂質という油が埋め、”ラメラ構造”を形成。その構造がバリア機能を担っている。スキンケアで油分を与えると、角層に浸透して細胞間脂質になじみ、バリアが強固に。水分が蒸発しにくくなる。

しなやかで柔軟に。

油分が不足した肌は硬く、ごわついているが、きちんと油を補えば、しなやかになり、柔軟さを増してくる。やはり革小物のお手入れを思い出せば、納得感あり。

つややかさをもたらす。

スキンケアの油分によって肌表面に薄い膜ができ、光を反射するので、ツヤが出る。バッグや靴などの革小物に油を塗ると、つややかになるのと同じ理屈だ。

美容成分を豊富に与える。

油分が多く含まれる化粧品には、油溶性の成分を配合しやすい。レチノール、ビタミンEなどのエイジングケア成分は油溶性だから、老化防止に期待が持てる。

クリーム、乳液、美容オイルはこう違う。

油分を多く含むケア製品にはクリーム、乳液、美容オイルがあるけれど、どう使い分ければいいかわからないという声を耳にする。特に違いがわかりにくいのがクリームと乳液だ。どちらも本来溶け合わない油分と水分を〝乳化〟技術で混ぜ合わせた〝エマルション〟といわれるものだが、

「クリームは固形、乳液は傾けると流れる形状で、一般的には乳液のほうが、クリームより油分が少ないつくりです。そのため、つけたとき、クリームは〝油〟が強く、乳液はやや〝水〟が強く感じられます。とはいえ、実は2つに明確な違いはなく、メーカーが独自に定義していることも多いのです」

手応えとしては、潤いキープ力が高く、ハリや柔軟性が出やすいのはクリーム、水分と油分をバランスよく与えられるのは乳液、即効的にツヤをプラスし、肌にソフトに蓋をするのは美容オイル。

「年齢を重ねた肌におすすめなのはクリームですが、正解はひとつではありません。選ぶ際にはまず、感触や香りが好みであることが第一。また3日以上使ってみて、メイクのりがよくなるなど、変化の兆しが出てきたら、肌に合っていると判断していいでしょう」

〈 バリエーションいろいろオイルケア 〉

ひと言で油分を含むケアといっても多種多様。テクスチャーの好み、目的に合わせて、自分に合うものをセレクト。

クリーム

コクのあるテクスチャーで、乳液より油分多め。肌にしっかり蓋をして、水分を逃さないうえ、エイジングケア成分をたっぷり補給できるため、年齢サインが気になる人向け。

乳液

クリームと同じエマルションでも水分多めだから、なめらかで肌なじみがよく、油分ケア初心者でも使いやすい。水分と油分を素早く補い、柔らかく、キメの整った美肌に導く。

美容オイル

数種類の植物オイルを混ぜて、美容成分を加えたものが基本形で、“油”そのもののテイストをダイレクトに味わえる。マッサージに、導入スキンケアにと用途が広い。

今の〝油モノ〟がベタつかない訳。

クリーム、乳液、美容オイルを嫌っている人に理由を尋ねると、「ベタつくから」と答えることが多い。でも、それは大間違い。今の〝油モノ〟は、昔とは違って、ベタつきにくいものが主流だ。

「化粧品の原料となる油には、たくさんの種類があります。以前はベタつく油がよく用いられていましたが、20年ほど前から、サラサラした感触の油が登場し、製品の感触も変化していきました」

そしてもうひとつ、感触のポイントとなるのが、原料の配合量、混ぜ方といった、料理でいえばレシピに当たる部分だ。

「多くの油の中から何を選び、どう組み合わせ、どう配合するかはブランドの腕の見せどころ。その技術が、肌への浸透性、後肌などを大きく左右します。たとえばベタつく油の代表であるワセリンも、うまく配合すると、リッチ感やハリを出すのに役立つことも」。またクリームや乳液の製造時に、油と水を混ぜる技術=乳化法も進化し、それに伴って感触も進化している。

「敬遠している人も、一度先入観を捨ててトライしてみてほしいですね。今は数多くのテクスチャーがあるので、探せばきっと自分好みのものと出合えます」

〈 感触は乳化で決まる 〉

油と水系成分を混ぜる乳化の仕方によって感触は違ってくる。下の2つが基本だが、最近はさらに複雑な乳化法も出現し、感触のバラエティに貢献。

O/W(オイルインウォーター)型。水系素材の中に油の粒が散らばっている。さっぱり感触に。

W/O(ウォーターインオイル)型。油系素材の中に水系成分の粒が分散。こっくりした感触に。

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