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梅シロップは疲労回復に効果あり。場所をとらないストックバッグでつくろう【クロワッサンライターの身になる話】

クロワッサンのライターがお役立ち情報を発信する連載【身になる話】。執筆した医療・健康本は100冊を超える医療ライターが梅シロップの作り方を解説します。
  • 文・韮澤恵理

梅の酸味が疲労回復にいい理由とは?

6月の初旬から青梅が出回り始めると、梅干し、梅酒、梅シロップ……どれを仕込もうかとそわそわします。一年でこの時期にだけしかできない保存食づくり。うっかりタイミングを逃して後悔した年も……。季節の恵みを、丹精込めて漬け物や果実酒を仕込むことを、昔の人は「梅仕事」と呼び、大切な年中行事にしていました。体にいい成分などがわからない時代から、梅は日本人の暮らしに溶け込んで健康を支えてきたんですね。

青梅の魅力は爽やかな酸味と香り。その正体はクエン酸を始め、酢酸、リンゴ酸といった有機酸です。梅は青い時期ほどリンゴ酸が多く、熟すに従って増えてくるのがクエン酸。クエン酸は、食べたものをエネルギーに変える「代謝」という仕組みを助けることで知られています。酸っぱいものを食べると疲れがとれるのは、エネルギーがうまく活用できるからなんです。

そんなに体にいいのに梅はなぜ生食しないのか、それは青梅にはアミグダリンという青酸配合体、いわゆる自然な毒が含まれるから。これは食べると頭痛やめまい、ときには呼吸困難を起こす危険な成分です。未熟な実ほど多く含み、特に種(仁)に多いのですが、熟すとともに少なくなり、加工することでも減ることがわかっています。そのため、漬け込んだり、加熱したりして無毒化した梅のエキスからは、有機酸のメリットだけが得られるのです。

水に溶けやすくて熱にも強い性質なので、梅酒や酢漬け以外にも、加熱したシロップやジャムなどアレンジを変えても健康効果がとどまっているので、好みの利用法でどうぞ。

梅シロップなら家族全員が一年中楽しめる

梅の保存食を1つ作るなら梅シロップが最もおすすめ。アルコールを含まないので、ドリンクとしてお酒に弱い人でも楽しめるのが魅力です。梅と砂糖は1対1の割合が基本。保存瓶で漬けるのが定番で、この方法なら失敗なく、クリアで梅の美味しさを楽しめるシロップに仕上がります。水や炭酸水で好みに薄めて氷を入れれば、暑い夏のリフレッシュにもぴったり。適量の糖分がエネルギー補給になり、酸で体をリフレッシュ。真夏に汗をたくさんかいたときには、ほんのひとつまみの塩を加えるとすばらしい補水ドリンクになりますよ。

レモン果汁を足したり、ヨーグルトドリンクに加えたり、アレンジは好みで。かき氷に原液をかけるとさっぱりとして、肉料理の口直しなどにすれば、ちょっと洒落ています。

せっかくだから知っておきたい砂糖のこと

梅酒には氷砂糖がよく使われます。これは大きな結晶が徐々に溶けるため、梅をふっくらと保ちながらゆっくりとエキスを抽出することができるため。でも、梅シロップは水分を加えないので、粒子の細かい上白糖やグラニュー糖、三温糖などが向いています。

上白糖はサトウキビやテンサイから絞った糖蜜を精製して結晶化したもの。しっとりと仕上げたのが上白糖で、サラサラの結晶がグラニュー糖。仕上げ方が違うだけで、成分などは同じです。真っ白な上白糖に比べ、薄茶色の三温糖は「なんだか自然派」なイメージがありますが、実はこれも同じ糖蜜が原料。結晶化する際に、加熱を繰り返していわば少し焦がしたような状態なのが三温糖です。加熱が長い分、こんがりとコクのある味わいになっていますが、どちらも天然の糖蜜だけでできた自然な甘味なので、さらりと仕上げたいなら上白糖やグラニュー糖、深みのある味にするなら三温糖を選ぶといいでしょう。

黒糖はサトウキビを絞った汁から不純物を取り除き、それ以上精製はせずに煮詰めたもの。固形になるので、そのまま、または粉末にしたものが流通しています。黒糖をもう少し扱いやすくしたのがきび糖。三温糖に似ていますが、きび糖の色味は精製途中の濾過しきっていないサトウキビのミネラルなどの成分です。

黒糖を使ったシロップは素朴な味に。溶けやすいように塊ではなく粉状のものを使うとなじみがよくおすすめです。

このほか、はちみつも独特の味わいが梅と好相性。梅が空気に触れないので、実が傷むことがなく必ずうまくできます。ちょっと贅沢ですが、メイプルシロップでも作れますし、オリゴ糖が多いテンサイ糖を使えば腸活にも役立ちそう。

左上から時計回りに氷砂糖、三温糖、上白糖、黒糖(粉末)

定番梅シロップの作り方

【材料 】
梅 1㎏
砂糖(上白糖や三温糖) 1㎏

1、梅はへたを竹串で取り除いて洗い、水気をよく拭く。
2、容量4ℓくらいの清潔な保存瓶を用意し、熱湯消毒するか、内部をアルコールで丁寧に拭く。
3、梅1/4量、砂糖1/4量の順に交互に入れ、瓶の蓋をする。毎日上下を返すように瓶を揺すり、水分が上がってくるのを待つ。
4、水分で梅が浸ったら冷暗所で保存し、砂糖が全部溶けたらできあがり。

この方法で漬けると、およそ1カ月で飲み始められます。梅がしわしわになってきたら取り出し、シロップだけを保存。雑菌が入らないように気をつければ、このまま保存できますが、加熱しても健康効果は変わらないので、琺瑯鍋などに移し、ひと煮立ちさせてから保存容器に移すと安心です。

場所を取らないストックバッグでも梅シロップは作れます。

梅を漬けた保存瓶を並べておくのは楽しいものですが、たくさん漬けたい時には場所をとるのが難点。保存瓶をいくつも揃えるのも大変です。そこでおすすめなのがファスナー付きの保存袋を使う梅シロップ。場所を取らず、外から砂糖をなじませることができるので仕上がりが早いのもうれしいところです。そのまま冷蔵庫で保存することもできます。

ポイントは2つ。誤って口が開くと砂糖だらけになってしまうので、ストックバッグはファスナータイプを選ぶこと。これなら多少発酵して内部にガスが溜まっても口が空いてしまうことが少なくなります。さらにバットやボウルなどの受け皿を敷き、万が一に備えれば万全です。

ストックバッグ梅シロップ

【材料】
梅 1㎏
砂糖(上白糖や三温糖) 1㎏

1、梅は竹串でへたを取り除いて洗い、水気をよく拭く。

2、ファスナー付きのストックバッグ(大)に梅を入れ、砂糖を入れてまんべんなくならし、しっかりと口を閉じる。バットなどにのせ、口を上にしておく。

3、水分で梅が浸ったらときどき向きを変えながら保存し、砂糖が全部溶けたらできあがり。気温によっては少し発酵することがあるので毎日口を開けて中の空気を出すといい。

3日目。
1週間目。砂糖で梅の実の水分がどんどん抜けるので、実は小さくシワシワに。

4、一気に水分が抜けるので、実はしわしわに。夏中に飲みきるならこのままでもOK。保存するならざるで漉して琺瑯鍋などに移し、沸騰直前まで加熱して熱いうちに清潔な保存瓶に移して保存すれば1年程度日持ちする。常温に置くと発酵することがあるので、冷蔵庫に入れると安心。

一年後。

クロワッサン医療ライター

韮澤恵理 (にらさわえり)

健康と食のエディター、ライター。出版社勤務後に独立してフリーに。ダイエット、健康法、エクササイズ、料理などの実用書籍やムックを編集制作している。生活周りの情報収集が趣味。

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