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食べる時間帯で疲労回復に違いが?医師に聞く疲れない体を作る食べ方の基本ルール。

疲れにくくなる、腸の調子を整える、疲労物質を排出する、筋肉や血管を丈夫にするといった食材は確かにあります。ではそれだけ食べていればOKかというと違います。疲れない体をつくる鍵は食べ方にあります。ここでは、栄養を足し算で摂る食べ方、年齢・性別・1日の活動量から、自分にとって適切な食事量の計算法、体に負担をかけない、食べる時間や順序など、基本ルールをお伝えします。
  • 文・韮澤恵理 イラストレーション・松元まり子

糖質は食べないなど 食材の引き算は、疲れを招く。

まず食事で大切なのは、何を食べるかです。米やパンには炭水化物が多く、肉や魚、卵、豆腐・大豆製品などはたんぱく質メイン。脂身の多い肉や魚は脂質が多く含まれ、炒め物や揚げ物に使う植物油も当然脂質です。

野菜にはビタミンやミネラルが豊富で、きのこや海藻は食物繊維が豊富。当たり前のことですが、いろいろな食材をバランスよく食べることが一番の基本です。やせたい、筋肉をつけたい、血糖値を上げたくないなど、人それぞれ悩みや目的があるけれど、特定の食材ばかり集中して食べたり、逆に何かを極端に避けるのは体にいいことではありません。

太りそうだから油をカットする、糖質も食べないなどと、食材をマイナスしていく食べ方は、バランスがくずれるだけでなく、疲れやすさや肌荒れ、便秘など、体調不良の原因になります。

細かい栄養計算はめんどうでも、控えめな主食に肉や魚の主菜、野菜やきのこ、海藻を副菜にするなど、ざっくりと多種類を食べて。

年齢、性別、活動量、 負担にならない食べる量を知ろう。

食べる量は、使う量に比例するのが基本。自分がどのくらい食べたらいいのか知っていますか? 一度、自分の必要エネルギー量を見つめてみるのもいいことです。

下に一般的に必要なエネルギー量の算出方法を紹介しました。筋肉の量などによって個人差があり、一概に体重と身長からは割り出せませんが、大きな目安にしてみてはいかがでしょう?

正確なカロリー計算をする必要はありませんが、なんとなく、食べ過ぎたな、不足だなと意識することで食生活は劇的に変わるものです。ポイントは、朝昼晩の食事だけではないことです。おやつを食べた、甘いドリンクを飲んだ、夕食とともにお酒を飲んだ……など、メモをしたり、スマホで写真を撮ったりしてみましょう。こうすることで、「食べてないのに太る」「しっかり食べているのに疲れる」という人の、食生活の問題点があぶり出されます。調子が悪い人は、必ず理由があるはずなのです。

(1) 身長から標準体重を決める

身長(m)× 身長(m)× 22= 標準体重(kg)

(2) 日常の活動強度から割り出す必要エネルギー量

▢ 軽い活動(デスクワーク、主婦など) 25〜30kcal
▢ 普通の活動(立ち仕事が多い職業)  30〜35kcal
▢ 重い活動(力仕事が多い職業)    35〜40kcal

(1)と(2)から必要なエネルギー量の目安を知る

標準体重(kg)× 活動強度による必要エネルギー量 = 1日に必要なエネルギー量(kcal)

【例】 身長160cmの人がデスクワークの場合
56kg × 25〜30kcal= 約1400〜1700kcal

同じ物、同じ量でも食べる時間帯で疲労回復に違いが。

食べる物、食べる量はもちろん、実は食べる時間帯も重要ということをご存じですか? 食事にも体内時計が大きく関わっています。

朝食で食べたものは、これから始まる1日の活動でほとんど消費されるので、炭水化物を多めに摂っても大丈夫。直接脳や体のエネルギーとして使われます。しっかり食べることで下がっていた体温が上がって免疫力が高まります。朝食を食べないと、体が飢餓を感じて代謝を落とすので、疲れやすく太りやすい状態に。

食べたものを脂肪に変える肥満に関わる時計遺伝子ビーマルワン(BMAL1)は、午前6時から午後2時くらいまでは働きが低下しているので、ランチやおやつのボリュームもそれほど気にする必要はありません。ただし、食べ過ぎると眠くなるのでほどほどに。

午後3時を過ぎたら要注意です。徐々に食べ物が脂肪に変わりやすくなり、夜中の2時くらいにはピークを迎えます。消化にかかる時間も考えると、夕食は8時くらいまでにすませたいのはこのためです。肥満は疲れの大敵なだけでなく、遅い食事は睡眠中にも胃腸が働き続けるため、細胞の再生が後回しになってしまいます。

疲れないためには何から食べるか 順番を考える。

ダイエットに効果があると野菜ファーストが話題を呼びましたが、疲れないための食べ方はちょっと違います。疲れにくい体はじょうぶな筋肉と血管、皮膚や粘膜が支えています。そのために、しっかり食べたいのはたんぱく質です。

50歳くらいを境目に、「若い頃のように食べられない」と感じる人も多いはず。それなのに野菜から食べ始めると、肝心のたんぱく質が不足することがあります。疲れないためには肉や魚から食べるミートファーストがおすすめです。

アミノ酸スコアが100で優秀なたんぱく源である卵や、筋肉を増やす働きを持つ牛乳も積極的に摂りましょう。以前は卵のコレステロールが気になると言われましたが、食べ物から摂るコレステロールは、血管疾患などに影響がないことがわかっています。コレステロールは細胞膜の原料なので、組織を健康に保つために欠かせない栄養素です。

(朝食)

朝食は目覚めのきっかけになるので、起きてから1時間以内くらいに。1日の労働に向けて、炭水化物やたんぱく質を摂りたい。量は空腹感に合わせるのがいい。

 ↓

(昼食)

活動の時間なので、しっかり食べていい。ただし、食べ過ぎは眠気を誘うので午後の効率が低下。ランチがずれても、夕食の時間や肥満ホルモンの分泌が少ない2時くらいまでに。

 ↓

夕食

できれば夜8時くらいまでにはすませたい。夕食が遅くなりそうなら、夕方おにぎりなどの軽食で小腹を満たし、夜は消化のよい軽いメニューにすると空腹食いを防げる。

工藤孝文

工藤孝文 さん (くどう・たかふみ)

内科医、漢方医

福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。帰国後、大学病院、地域の基幹病院を経て、福岡県みやま市の工藤内科で地域医療に携わる。著書に『やせる出汁』(アスコム)、『疲れない大百科』(ワニブックス)など多数。テレビ『ガッテン!』『ホンマでっか!? TV』などでも活躍。

『Dr.クロワッサン 免疫力を強くする、疲れない体のつくり方。』(2020年6月26日発行)より。

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