暮らしに役立つ、知恵がある。

 

【発酵食レシピ付き】ワタナベマキさんに聞く、菌活への目覚めや菌との付き合い方。

生きた菌がうま味を醸す発酵食。日々の食事に取り入れているワタナベマキさんに、菌活への目覚めや菌との付き合い方を聞きました。

撮影・黒川ひろみ 文・日高むつみ

幼い頃からの酸味好きが高じ、今や発酵食は欠かせない日々の味。

ワタナベマキさん 料理家
ワタナベマキさん 料理家

祖母や母から伝えられた手仕事をベースに、モダンなセンスをプラスした料理や保存食、乾物料理で人気のワタナベマキさんは大の発酵食好き。著書『発酵野菜があればおいしいごはん』でも、多彩なレシピを紹介している。

「発酵食っていいですよね。うま味はもちろんですが、香りや酸味にも深みがあって。素材そのままの時にはない味わいが生まれます」

発酵食が身近にある環境で育ったというワタナベさん。祖母から株分けされたぬか床を使ったぬか漬け、毎年寒の時季に母が仕込む自家製味噌、その味噌で漬けた魚や麹漬けの野菜……。

「だから菌活や発酵食は、私にとって特別なことではなく当たり前のことだったんです。今思えば、よい食環境で育ててもらったな、と。子どもの頃からの酸味好きは大人になっても変わりませんね。もしかしたらお酒を嗜むようになって、ますます好きになっているかもしれません(笑)」

発酵によって生まれる酸味は、ほんのり漂う程度のものから目の覚めるような強いものまで、グラデーション豊か。うま味や香りと相まって、ごはんのお供としても、お酒の相棒としても間違いがないとワタナベさん。

【私の味噌活!】

結婚以来、毎年仕込む味噌。2〜3月に仕込んで9月に天地返しする。今年は、島根県のやさか共同農場から大豆と糀を取り寄せた。
結婚以来、毎年仕込む味噌。2〜3月に仕込んで9月に天地返しする。今年は、島根県のやさか共同農場から大豆と糀を取り寄せた。

味噌とぬか漬けは毎日食べても飽きがこない菌の補給源。

母に教わったやり方で毎年仕込む味噌は、ワタナベさんにとって家族の健康を支える大きな柱。仕込みの前日から大豆に水を吸わせて茹で上げ、その後は手作業で潰していく。大変な作業だが、できあがりのおいしさを思えば苦にはならないという。

「フードプロセッサーだと大豆に角が残って、口あたりがいまひとつな気がして。粗くてもいいから手で潰すほうがまろやかな味噌になります。子どもが小さい頃は、大きな袋に入れて踏んで潰してもらったりしたことも。できあがった味噌の中に、潰れずそのままの姿で残っている豆を見つけると、当たりを引いたような気持ちになって楽しいんです」

ぬか漬けを始めて12〜13年。祖母から受け継いだぬか床に、母のぬか床を足して使っている。器は陶芸家・伊藤環さんにオーダーしたもの。
ぬか漬けを始めて12〜13年。祖母から受け継いだぬか床に、母のぬか床を足して使っている。器は陶芸家・伊藤環さんにオーダーしたもの。

毎日かき回して世話を焼いているぬか床も、大切な菌の補給源だ。以前はホーローのストッカーを使っていたが、2年ほど前に小さめの陶器の壺に容器を替えた。

「取材で行った長野・伊那の漬物屋さんで、漬物も発酵食品で呼吸するものだから、金物やプラスチックより土もののほうがいいと聞いて。以来、よりおいしくなった気がします」

ぬか床が水っぽくなったら、昆布や干し椎茸、高野豆腐、きな粉を入れて水分調整。同時にうま味がぬか床に染み込みむので、ぬか漬けの味わいがますます複雑になるのだという。

これらキッチンの定番発酵食に加え、ワタナベさんが大人になってからレギュラー入りを果たしたのが、塩麹と醤油麹、発酵野菜だ。

生きて菌を取り入れられるよう、熱を入れるのは最小限に。

塩麹は塩と麹と水を合わせ、ヨーグルトメーカーで発酵させて1日で完成。醤油麹は同量の醤油、みりん、日本酒を合わせ、火にかけてアルコールを飛ばしてから麹を加えて1〜2週間常温で発酵させる。……と作り方はごくベーシックだが、ここからがワタナベさん流。使い切らずに余りがちな香辛料を加えてみたら新鮮な味わいに!

「麹自体に甘みがあるので、唐辛子や山椒を入れると辛味が引き立ちます。作っておけば、仕上げに絡めるだけで簡単においしい料理のできあがり。オールインワンの調味料として味が完成しているから、失敗がないんですよ」

塩水につけて発酵させる発酵野菜も、料理の薬味や付け合わせに大活躍。

「ひとつだけ、麹も発酵野菜も熱を入れすぎないように気をつけてください。できるだけそのまま、火を入れる時は仕上げに加える程度にすれば、菌は生きた状態で体の中へ。これならたっぷり食べても体は軽やか。これが我が家の健康を支える菌活です」

【菌活のカナメ!】

ベーシックな醤油麹と塩麹をアレンジ。さっと茹でた実山椒を漬け込んだ実山椒入り醤油麹(左)と、粗挽きの…

ベーシックな醤油麹と塩麹をアレンジ。さっと茹でた実山椒を漬け込んだ実山椒入り醤油麹(左)と、粗挽きの乾燥唐辛子を加えた唐辛子入り塩麹(右)など様々な香辛料で味の変化を楽しめる。

厚揚げと長ねぎの唐辛子塩麹あえ

【材料(4人分)】 厚揚げ(小)2枚 長ねぎ10cm 唐辛子入り塩麹大さじ1 ごま油大さじ1 酢大さ…

【材料(4人分)】
厚揚げ(小)2枚
長ねぎ10cm
唐辛子入り塩麹大さじ1
ごま油大さじ1
酢大さじ1
炒りごま少々

【作り方】
1.厚揚げをグリルで焼き、食べやすい大きさにカット。長ねぎを長さ2cmほどの薄切りにして水にさらす。
2.唐辛子入り塩麹、ごま油、酢を合わせ、水を切った長ねぎと和える。
3.厚揚げの上に2を天盛りにして、仕上げに炒りごまをふる。

【万願寺とうがらしの実山椒醤油麹炒め】

【材料(4人分)】 万願寺とうがらし(大)6本 実山椒入り醤油麹大さじ1 ごま油少々 日本酒少々 【…

【材料(4人分)】
万願寺とうがらし(大)6本
実山椒入り醤油麹大さじ1
ごま油少々
日本酒少々

【作り方】
1.万願寺とうがらしをごま油で炒め、日本酒をまわしかけて蓋をし、蒸し焼きにする。
2.万願寺とうがらしがしんなりしてきたら、実山椒入り醤油麹を加えて絡める。

しば漬けのマスカルポーネチーズ和え

【発酵食レシピ付き】ワタナベマキさんに聞く、菌活への目覚めや菌との付き合い方。

【材料(4人分)】
自家製しば漬け30g
マスカルポーネチーズ30g

【作り方】
マスカルポーネチーズに粗く刻んだしば漬けを合わせて混ぜ、器に盛り、オリーブオイルをまわしかける。
※焼いたバゲットやクラッカーを添えて。

しば漬けは、きゅうりやみょうがを塩もみし、塩に対し10%の塩水となるよう水をひたひたに注ぎ2〜3日。…

しば漬けは、きゅうりやみょうがを塩もみし、塩に対し10%の塩水となるよう水をひたひたに注ぎ2〜3日。白濁したら赤梅酢少々を加える。

【発酵食レシピ付き】ワタナベマキさんに聞く、菌活への目覚めや菌との付き合い方。

発酵玉ねぎは、繊維に沿って薄切りにした玉ねぎを塩でもみ、塩に対し10%となるよう水をひたひたに注ぎ、毎日混ぜながら2〜3日。

「憧れは蔵付き酵母の棲んでいるマイ発酵蔵。 素敵な蔵に行くと空気ごと持ち帰りたくなる」

【発酵食レシピ付き】ワタナベマキさんに聞く、菌活への目覚めや菌との付き合い方。

ワタナベマキさん 料理家
グラフィックデザイナーから転身。雑誌やテレビで紹介するシンプルでわかりやすく、飽きのこないレシピで人気。著書に『そうざい麺』など。

 

『クロワッサン』1029号より

  1. HOME
  2. からだ
  3. 【発酵食レシピ付き】ワタナベマキさんに聞く、菌活への目覚めや菌との付き合い方。

人気ランキング

  • 最 新
  • 週 間
  • 月 間

注目の記事

編集部のイチオシ!

オススメの連載