「みんな何度も顔を合わせるから仲良くなって、キャビネに焼いた写真をあげたり。そのうち、私を店に立たせて何時間も帰ってこないオネエさんもいたっけ(笑)」
親方の家に呼ばれて、刺青を撮らせてもらったり、「2号はいるから、3号にならないか」と言われたこともある。ついには、ある組の襲名披露式を撮影することに。
「撮っているあいだは私、怖いとは思わないのね。構図とかもあんまり考えない。ただ夢中で、体が先に動くという感じかな」
そんな渡辺さんのキャラクターゆえだろうか、被写体は誰も無防備だ。モノクロームの、昭和の懐かしい風景のなかにたたずむ男女は一見強面だが、その表情は飾るところがなく、まるで内面がそのまま写されているようにさえ見える。
「この人たちにはほんとうにいろいろ教えてもらったなあ。ミイラ取りがミイラになるなよ、なんて心配してくれる人もいましたね」