もちろん、すべての人に劇的な恋が訪れるわけではないだろう。
「なにも恋愛じゃなくても、のめり込める趣味でもなんでもいい。自分にとって大切なものが記憶の中にあるかどうかが、大事なことであり、希望なのかもしれません」
ところで、この作品の特徴は、書簡体小説であるということ。20年にわたり、断続的にやりとりされる文章は、その時々の年齢にふさわしい成長を見せる。
「この二人、よく考えるし、よく書く人たちなんです(笑)。手紙って、投げかけるように、伝わるように書くもの。親しい相手には割と赤裸々だったりもしますしね。それが日記とはまた違う手紙の面白さで、一人称の小説より、もっと登場人物の内面に入りこんでいく気がしました。手紙ならではの熱狂と変な間合いもあって」