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『おじさん酒場』山田真由美さん|本を読んで、会いたくなって。

我が道を行くおじさんは、人生を楽しむプロ。

やまだ・まゆみ●静岡県下田市生まれ。出版社勤務を経てフリーのライター・編集者として書籍、雑誌などの制作に携わる。飲むだけでは飽き足らず、2017年、下田で酒場『Table TOMATO』をオープン。読売新聞で「ぶらり食記」を連載中。

撮影・岩本慶三

「昨夜も新宿で飲んでたんです。この本に出てくる居酒屋で。そしたら知り合いのおじさんとバッタリ。久しぶりだったので盛り上がっちゃいました」

昨夜の延長のように陽気に語るのは、『おじさん酒場』の著者、山田真由美さん。イラストレーターのなかむらるみさんと共に下町を中心に酒場100軒ほどを飲み歩き、心から楽しんで酒を呑んでいるおじさんたちと、彼らがしっくり収まるいい雰囲気の居酒屋の様子25軒分をレポート。ユニークで人情溢れる、おじさんたちへの敬意と愛に満ちた一冊だ。

「なかむらさんは、イラストレーターだからか、眼鏡やヒゲ、髪型など視覚的な部分からおじさんを観察する。私は彼らの人生や人柄など、内面的なところが気になる。それを語り合いながら呑むと、お酒が進む進む!」

そもそも、なぜ “おじさん” にフォーカスすることにしたのだろう。

「酒場のおじさんはみんな自由。年齢や肩書など関係なく、その場を楽しむプロなんです。彼らを見ていると、自分が悩んでいることはなんてちっぽけなのかと、吹っ切れちゃいます。 “ちょっと黙って” と言うくらいに身の上話をとうとうとしてくるおじさんや、とにかく物をあげようとするおじさんに捕まったりとか、少し面倒なこともありますけど。でも、それも含めて面白い」

この本を読むと、おじさん酒場で飲みたくなってくる。でも、初心者や女性だけで乗り込んでも、居心地が悪そう……。

「女性店主だったり、家族経営だと、ウェルカムな雰囲気のお店が多いです。例えば浅草の『志婦や』さん。家族経営で、子どもが『ただいまー』なんて店の中を通って自宅に上がっていったりして、古き良き時代を感じることができます。常連さんが注文しているものを聞くのも、早くなじむテクの一つ」

切り口がおじさんなだけで、この本をガイドブックとして使ってほしいと山田さん。確かに、こんな庶民的な居酒屋のガイドブックはあまり見ない。

「下町の昭和な雰囲気漂う居酒屋はどんどん減っていっているし、今の20代〜30代の男性は、数十年後に今のようなおじさんにはなっていないかもしれない。生きる時代が違うわけですから。とすると、こうした酒場は今しか見られない貴重な風景。気後れせずに、どんどんおじさん酒場へ出かけてほしいですね。なんなら読者の皆様をご案内したいくらいです(笑)」

亜紀書房 1,400円

『クロワッサン』961号より

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※ 記事中の商品価格は、特に表記がない場合は税込価格です。ただしクロワッサン1043号以前から転載した記事に関しては、本体のみ(税抜き)の価格となります。

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