好景気の田沼時代に身を起こし、江戸の文化のキーパーソンとして人と人をつないだ蔦重。一転して不況の松平時代、検閲で春町が自死し、京伝が創作を投げ出しても、蔦重はめげなかった。
「写楽が活躍した約10カ月のうち、最も異様な初期の28作。これは蔦重がクリエイターとして力を発揮し、能役者の齊藤十郎兵衛を “あやつって” 描かせたものだと私は考えます。以後は人形の糸が切れて、コントロールが利かなくなった。蔦重の執念の最後の輝きこそが写楽の本質です」
増田さんのデビュー作はボディビルダーの執念を描くノンフィクション『果てなき渇望』。その後もスポーツもののノンフィクションを書く機会が多かった。最近は小説に軸足を置いている。