【南高梅】和歌山県 紀中・紀南の郷土の味を堪能する旅──和歌山の特産品・梅の生産現場を訪ねる
撮影・黒川ひろみ
柔らかくてフルーティ。日本を代表する梅の王様
紀伊半島の南に位置する、紀中・紀南エリア。世界遺産や白砂の海岸、歴史ある温泉のほかに外せないのが、豊かな山海の幸に恵まれた食文化。ここを訪れたのは料理研究家の牧田敬子さん。
「梅干しは過去に何回か仕込みましたが、最近は作ってなくて。和歌山といえば南高梅ですよね」(牧田さん)
和歌山の特産品として多くの人が思い浮かべるのが、みかんと梅だろう。みなべ町は全国の収穫量の4分の1を占める梅の名産地。ここ「たかだ果園」には、最高級種・南高梅の祖である母樹があり、今でも実をつけている。
「梅林が段々状なのは初めて知りました。南高梅は実が大きく赤い色がきれい。漂っている甘い香りは木から落ちた実でしょうか。もったいない〜と思ってしまいます(笑)」(牧田さん)
「あの自然落下したものを収穫するんですよ。硬い青梅のうちに出荷して追熟させるものと違い、みなべ町では完熟した梅を塩漬けにする一次加工まで農園で行うのが伝統的な農法です」と言うのは、代表の高田智史さん。そうして加工された白干し梅を使って、しそ梅干し作りに挑戦。いずれもたかだ果園で有機栽培された材料だ。
「揉みしそと梅を交互に瓶に詰めていくのですが、この赤しその畑も先ほど高台から見えました」(牧田さん)
このまま約3週間漬け込んで、完成を待つ。手際のよい牧田さん、時間と余力があったので梅シロップと梅ジャムもあっという間に仕込んでしまった。
「工程も楽しいですが、旅の思い出になるお土産がたくさん作れたので、家で食べるのも待ち遠しいです」
たかだ果園
1902年創業、「紀州南高梅」の発祥農園。梅の収穫などの農業体験のほか、農園内の小高い丘にある「見晴らしハウス」では、有機しそ梅干し作り、梅シロップ作り、梅ジャム作り、梅酒作りなど、さまざまな梅作りが体験できる。
ここにも立ち寄って
みなべ町まで来たら、北上して日高川町にも足を延ばしたい。安珍清姫伝説で有名な県内最古の寺、道成寺では、県指定重要文化財の三重塔や、樹齢600年ともいわれる槙柏(カイヅカイブキ)の巨樹を見たり、絵とき説法を聞いたりすることができる。
「歌舞伎の『娘道成寺』の舞台ですね。絵とき説法は、舞台とはまた違った面白さがありました」(牧田さん)
物語の中で、清姫は釣鐘の中に隠れた安珍を釣鐘ごと焼き殺してしまう。そういった逸話もあり、道成寺には今も釣鐘がない。その代わりに、寺周辺では釣鐘形の饅頭が販売されている。お土産には真空パックのタイプを、食べ歩きにはぜひ焼きたてを。
道成寺
小野俊成院主らによる『道成寺縁起』の絵巻写本を使った絵とき説法は、宝物殿を拝観した人なら誰でも聞くことができる。紙芝居のようにわかりやすく、時折ユーモラスな表現も交えるなど、エンターテインメント性が高い。
雲水
道成寺の釣鐘伝説にちなんだ釣鐘形の饅頭は、門前町の銘菓。創業100余年のこちらの老舗では、黒あん、白あんに加え、和歌山県産の柑橘類じゃばらの餡や季節の餡などが揃う。〈雲水釣鐘まんじゅう〉6個入り880円ほか。店頭では焼きたても購入できる(1個140円)。
再び南下して目指すのは、この日の宿を取った南紀白浜。温泉に入る前に、美しい白浜の海岸も歩いてみたい。さらに時間があれば熊野本宮にも足を延ばしたい。
「和歌山は見どころが満載で、数日あっても回りきれないぐらい! 空港に着いた時から南国リゾートの雰囲気に魅了されましたが、名所はどこも絶景だし、郷土料理をはじめとする地元の食事はどれもあっさりと上品な味付けで、とても好みでした。近いうちに再訪したいです」(牧田さん)
千畳敷
白浜の観光名所のひとつ。約1600万年前の地層が地震のたびに隆起してできたという階段状の岩盤は、畳を千枚敷いたように見える。白く輝く日中も、夕焼けに染まるサンセットも美しい。
熊野本宮大社旧社地大斎原
熊野本宮大社から約500mに位置する、近年、パワースポットとして注目を集めている旧社地。明治22年の大洪水までは、ここに現在の数倍の規模の大社があった。高さ約34m、幅約42mの大鳥居は圧巻。
ホテル三楽荘
白良浜から歩いてすぐ、全室オーシャンビューのホテル。南紀白浜温泉の源泉かけ流し大浴場のほか、露天風呂付きの客室(上写真)も22室備えている。和歌山の旬の食材が豊富な和朝食ビュッフェもうれしい。
『クロワッサン』1169号より
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