【めはり寿司】和歌山県 紀中・紀南の自然と伝統を巡る旅──知恵が詰まったおいしさに感動。郷土の味を訪ねて
撮影・黒川ひろみ
目を見張るほど大きい、熊野地方発祥のお弁当
紀伊半島の南に位置する、紀中・紀南エリア。世界遺産や白砂の海岸、歴史ある温泉のほかに外せないのが、豊かな山海の幸に恵まれた食文化。ここを訪れたのは料理研究家の牧田敬子さん。
「旅好きで国内外あちこち行きましたが、実は和歌山は初めて。楽しみです」
羽田空港から1時間強のフライトで南紀白浜空港に到着。そこから県南東部の那智勝浦町へ向かう。めはり寿司作りが学べるお寺があるというのだ。
めはり寿司とは熊野地方に伝わる伝統料理で、高菜の漬物で包んだおにぎりのこと。ご飯は酢飯ではなく、醤油や高菜、おかかなどで味付けをする。名前の由来は諸説あるが、
「もともとは林業に携わる方のお弁当だったため、腹持ちのよい大きなサイズで作られていました。食べる時に口を大きく開けて目を見張るから“めはり”寿司なのだと聞いています」とは、大泰寺住職の西山十海さん。お寺スタッフの指導の下、牧田さんもめはり寿司作りにトライ。巻いている途中で葉を破ってしまう人も多い中、さすがの仕上がりに(上写真)。
「おにぎりは丸ではなく俵形にしてみました。高菜のしわを引っ張りながら巻きつけると表面にツヤが出るんですね。この巻く作業がちょっと楽しい。味も塩気がほどよく後味さっぱりで、とてもおいしいです」(牧田さん)
めはり寿司はいにしえの携行食。熊野古道や那智の滝へは、作るなり買うなりして携えていくのも一興だ。ところで、今回は具におかかも加えたが、「昨今はベジタリアンやヴィーガンの方もいらっしゃるので、鰹節やだし醤油を使わないような工夫もしています」(西山さん)とのこと。伝統を墨守するだけでなく時代に合わせた柔軟な対応をすることで、この味は今後も継承されていくのだろう。
大泰寺
開創1200年の伝統ある薬師霊場ながら、宿坊やサウナ、キャンプ場も備え、新感覚の「OTERA STAY」が味わえる。めはり寿司作り体験は9時〜17時(HPから要予約。約1時間)、費用1,500円(3個)。https://oterastay.com/daitaiji/
ここにも立ち寄って
だし醤油の話題が出たが、ここ那智勝浦は、漁獲後に一度も冷凍されていない、生まぐろ水揚げ量日本一を誇る漁港の町。新鮮なモチモチの生まぐろも、伝統の味のひとつ。
「本当に身がもっちりしている! 東京で食べるまぐろとはまた違うおいしさを知りました」(牧田さん)
鮪十屋
勝浦漁港の水産会社「木下水産物」直営の、生まぐろ丼専門店。写真は、新鮮な生まぐろをオリジナルたれでいただく〈もちもち生まぐろ二色丼〉1,200円。食べ放題の〈まぐろのアラ汁〉も絶品!
熊野古道大門坂
那智の滝を目指すなら、この大門坂からスタートするのがおすすめ。滝までのおよそ2.5kmは、大門坂を約270段、熊野那智大社への参道を約470段と上りの石段が続くが、美しい杉木立に癒やされながら熊野古道を堪能できる。
那智の滝
熊野那智大社の別宮、飛瀧神社の御神体として崇められている那智の滝。落差133mの流れを真正面に拝観することができる舞台や、「延命水」といわれる滝壺の水が飲める場所もある。日本三大名瀑の神秘的で荘厳な姿に、誰もがしばし言葉を失う。御滝拝所舞台は参入料大人300円。
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